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千一夜
第50章 第七夜 秘密の場所
「あの人って沢田さんのことか?」
「そう」
「沢田さんのことで会長は何も言ってない。沢田さんには悪いが、もう必要ないということだろう」
「確かに。でもさ、挨拶くらいあってもよかったんじゃないの?」
「都合があるんだろ」
そうは言ったが、香坂の言うことに間違いはない。立つ鳥跡を濁さず。常識がある人間なら、仕事を離れる前にその後の指示は出すだろうし挨拶くらいはする。
「あっ、これいい写真ね」
香坂は○○街の水道水を一口口に含むと、コップをテーブルに置き立ち上がった。そして壁に飾ってある私と咲子が写っている写真の前に立った。
私と咲子が宿の部屋で並んで座っている。香坂が見ているそれは、咲子のスマホを宿の従業員に渡して撮ってもらったものだ。
「美男美女」
「長谷川、そういう冗談も言えるようになったんだ。いい傾向よ。それにしてもお嬢様の浴衣めちゃめちゃ綺麗ね」
「紫の浴衣か、咲子のお気に入りだ。それを着てすずかけの道を歩きたいと言ったが、止めさせたよ」
「当たり前じゃん。もう冬よ。浴衣の上に半纏を羽織ったくらいじゃ寒さなんて凌げないわ」
「……」
「お嬢様、新婚旅行の写真を原町のおばあちゃんに見せながらいろいろと話しているんでしょ?」
「ああ、土産はダメだが土産話ならいくらしてもいい。俺は咲子にそう言った」
「何よそれ。でも本当にお嬢様はいい人ね。原町のおばあちゃん、以前より元気になったんですって。お嬢様に会う日は、早くしろと家の者を急かせるそうよ。原町のおばあちゃん、お嬢様大好きだもんね。そうだ長谷川、次の選挙は長谷川咲子さんに出てもらえばいいじゃん。そうなれば次も無投票になるだろうし、その分、税金も節約できるじゃん」
「そうして欲しいが、遠山家には絶対に自分の家から政治家は出さないと言う決まりがあるらしい」
「でも長谷川が出るじゃん」
「俺は遠山家の人間じゃない」
「長谷川はもう遠山の人間よ」
「違うよ」
「ああ面倒くさい」
香坂はそう言うと腕組みをした。そして写真に顔を近づける。だが無言。
「どうした? 俺と咲子の他に誰かが写り込んでいるか?」
「ちょっとうるさい。長谷川黙ってて」
香坂の強い言葉。すると香坂の表情がだんだん強張っていった。
「……」
私と咲子の他に誰かが写っているはずなどない。
「あっ! 思い出した!」
香坂の大きな声が部屋に響いた。
「そう」
「沢田さんのことで会長は何も言ってない。沢田さんには悪いが、もう必要ないということだろう」
「確かに。でもさ、挨拶くらいあってもよかったんじゃないの?」
「都合があるんだろ」
そうは言ったが、香坂の言うことに間違いはない。立つ鳥跡を濁さず。常識がある人間なら、仕事を離れる前にその後の指示は出すだろうし挨拶くらいはする。
「あっ、これいい写真ね」
香坂は○○街の水道水を一口口に含むと、コップをテーブルに置き立ち上がった。そして壁に飾ってある私と咲子が写っている写真の前に立った。
私と咲子が宿の部屋で並んで座っている。香坂が見ているそれは、咲子のスマホを宿の従業員に渡して撮ってもらったものだ。
「美男美女」
「長谷川、そういう冗談も言えるようになったんだ。いい傾向よ。それにしてもお嬢様の浴衣めちゃめちゃ綺麗ね」
「紫の浴衣か、咲子のお気に入りだ。それを着てすずかけの道を歩きたいと言ったが、止めさせたよ」
「当たり前じゃん。もう冬よ。浴衣の上に半纏を羽織ったくらいじゃ寒さなんて凌げないわ」
「……」
「お嬢様、新婚旅行の写真を原町のおばあちゃんに見せながらいろいろと話しているんでしょ?」
「ああ、土産はダメだが土産話ならいくらしてもいい。俺は咲子にそう言った」
「何よそれ。でも本当にお嬢様はいい人ね。原町のおばあちゃん、以前より元気になったんですって。お嬢様に会う日は、早くしろと家の者を急かせるそうよ。原町のおばあちゃん、お嬢様大好きだもんね。そうだ長谷川、次の選挙は長谷川咲子さんに出てもらえばいいじゃん。そうなれば次も無投票になるだろうし、その分、税金も節約できるじゃん」
「そうして欲しいが、遠山家には絶対に自分の家から政治家は出さないと言う決まりがあるらしい」
「でも長谷川が出るじゃん」
「俺は遠山家の人間じゃない」
「長谷川はもう遠山の人間よ」
「違うよ」
「ああ面倒くさい」
香坂はそう言うと腕組みをした。そして写真に顔を近づける。だが無言。
「どうした? 俺と咲子の他に誰かが写り込んでいるか?」
「ちょっとうるさい。長谷川黙ってて」
香坂の強い言葉。すると香坂の表情がだんだん強張っていった。
「……」
私と咲子の他に誰かが写っているはずなどない。
「あっ! 思い出した!」
香坂の大きな声が部屋に響いた。

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