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千一夜
第50章 第七夜 秘密の場所
「奥さんはご飯食べてるときが一番ええ顔してはるな」
「ははは」
私の笑い声が車内で響いた。思わず笑ってしまったが、樋口の言ったことに間違いはない。幸せそうにご飯を食べる咲子を見ていると私も幸せになる。
天川大弁財天社の参拝を終えて、私たちは樋口を誘って近くのレストランで食事を取った。
「樋口さん、それどういう意味?」
「すんまへんすんまへん。意味なんてあらしまへんがな。ご飯いうものは美味しく食べなぁあかん。ご主人、そう思いますやろ?」
「全くその通りです」
樋口の言うことに異論はない。
「美味しかったでっしゃろ?」
「旅館の料理も、洞川のコーヒーも、そしてさっきのレストランも、みんな美味しかったです」
私は樋口にそう答えた。本当に奈良の食べ物や飲み物には外れがなかった。
「ご主人、いいこといわはる。奈良にうまいものなしって失礼な言葉やで」
「志賀直哉か」
志賀直哉の随筆を読めばわかるのだが、ほんの少しニュアンスが違う。それに志賀は奈良の食べ物をすべて否定しているわけではない。
「そやけど、新婚旅行に来て土産も買われへんいうのも政治家も大変でんな」
「原町のおばあちゃんだけにはお土産買いたかったんだけど」
咲子がそう言った。
「ご両親にもお土産ダメなんでっか?」
「会長に釘を刺されました。あっ、会長というのは咲子の父です」
「そう言えば奥さんのお父さんの会社って大きな会社なんですな。びっくりしましたわ」
「樋口さん、問題です。〇〇市の市長の年収と父の会社の部長の年収、どちらが高いでしょうか?」
「おい、そんなクイズは品がないぞ」
「いやいやご主人、関西人はお金の話が大好きなんですわ。そやな、奥さんの自信満々のいい方から察すると奥さんのお父さんの会社の部長さんかな」
「ふふふ。樋口さん、正解です。ふふふ」
「どこの市長さんもぎょうさんもろてるかと思ってましたが、違うんでんな」
「……」
どう答えていいのかわからなかった。市長の給料なんて世間で思うほど高くはない。
「あっ!そやそや来年もよろしゅう頼みます」
「来年?」
私は樋口が何のことを言っているのかわからなかった。咲子も不思議に思ったらしく、驚いた顔を私に向けた。
「あれ? 予約したのとちゃいますか?」
「予約ですか?」
私は樋口に訊ねた。
「長谷川さんの秘書の方から予約の電話ありましたで」
「ははは」
私の笑い声が車内で響いた。思わず笑ってしまったが、樋口の言ったことに間違いはない。幸せそうにご飯を食べる咲子を見ていると私も幸せになる。
天川大弁財天社の参拝を終えて、私たちは樋口を誘って近くのレストランで食事を取った。
「樋口さん、それどういう意味?」
「すんまへんすんまへん。意味なんてあらしまへんがな。ご飯いうものは美味しく食べなぁあかん。ご主人、そう思いますやろ?」
「全くその通りです」
樋口の言うことに異論はない。
「美味しかったでっしゃろ?」
「旅館の料理も、洞川のコーヒーも、そしてさっきのレストランも、みんな美味しかったです」
私は樋口にそう答えた。本当に奈良の食べ物や飲み物には外れがなかった。
「ご主人、いいこといわはる。奈良にうまいものなしって失礼な言葉やで」
「志賀直哉か」
志賀直哉の随筆を読めばわかるのだが、ほんの少しニュアンスが違う。それに志賀は奈良の食べ物をすべて否定しているわけではない。
「そやけど、新婚旅行に来て土産も買われへんいうのも政治家も大変でんな」
「原町のおばあちゃんだけにはお土産買いたかったんだけど」
咲子がそう言った。
「ご両親にもお土産ダメなんでっか?」
「会長に釘を刺されました。あっ、会長というのは咲子の父です」
「そう言えば奥さんのお父さんの会社って大きな会社なんですな。びっくりしましたわ」
「樋口さん、問題です。〇〇市の市長の年収と父の会社の部長の年収、どちらが高いでしょうか?」
「おい、そんなクイズは品がないぞ」
「いやいやご主人、関西人はお金の話が大好きなんですわ。そやな、奥さんの自信満々のいい方から察すると奥さんのお父さんの会社の部長さんかな」
「ふふふ。樋口さん、正解です。ふふふ」
「どこの市長さんもぎょうさんもろてるかと思ってましたが、違うんでんな」
「……」
どう答えていいのかわからなかった。市長の給料なんて世間で思うほど高くはない。
「あっ!そやそや来年もよろしゅう頼みます」
「来年?」
私は樋口が何のことを言っているのかわからなかった。咲子も不思議に思ったらしく、驚いた顔を私に向けた。
「あれ? 予約したのとちゃいますか?」
「予約ですか?」
私は樋口に訊ねた。
「長谷川さんの秘書の方から予約の電話ありましたで」

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