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千一夜
第50章 第七夜 秘密の場所
 鳥居をくぐる前に咲子は一礼した。参道も端を歩き、手水舎で心身を清める作法も完ぺきだった。
 遠山高獅の教育が咲子をそうさせているのだと思った。お嬢様として育てられても、伝統や風習を決してないがしろにはしない。そして咲子の振る舞いはとても自然だ。ぎくしゃくすることなく流れるように体が動いてる。さすが武士の家の女だ。
「君に驚いていることが一つあるんだ」
「驚いていることって何?」
 私は咲子と手を繋いで本殿に向かう階段を一段一段上っている。
「君は優しいと言うことだ」
「亮ちゃん、それってものすごく私に対して失礼なんだけど」
「悪い悪い。君は優しいよ。でも俺が思っていた以上に君は優しい、そういうことだ」
「私のこと、どんなふうに思っていたのよ?」
「お嬢様育ちの我儘な女」
「失礼ね」
「痛っ!」
 咲子が私の手をつねった。
「あっ、いけないいけない。私たちこれからお参りにいくのよね」
「そうだよ。神様は今君がしたことを見ているから」
「お参りのとき謝るわ」
「ふん」
「神様、今亮ちゃんが『ふん』て言いましたよ。ふふふ」
 神聖な場所だからなのか、心が落ち着く。心が落ち着くと偽りのない言葉が出る。
「原町のおばあちゃんのことだ。どうやらあのおばあちゃん、君のことが大好きなようだ」
「原町のおばあちゃんね。優しいのはあのおばあちゃんよ」
 一時的ではあるが、今私は咲子と私の実家で暮らしている。遠山の家の娘が普通の家に嫁ぐと、周りがうるさくなる。毎日エプロンを着けた女性が我が家にやってきて、家事の一切をやるのだ。
「そなことは止めてくれ」と何度言っても私の実家には誰かが来て、食事の支度や掃除などの手伝いをする。中には咲子の顔だけを見るために我が家を訪れる者のいるのだ。その中に原町(○○市にある町名)のおばあちゃんがいる。
 認知症を患っている九十のおばあちゃんは、ある日「お姫様、こんにちは」と言って私の実家にやってきた。
 リビングのソファに座り咲子の手を握りながら原町のおばあちゃんは一時間くらい話し続ける。付き添いの家の者が「もう帰ろう」と言っても原町のおばあちゃんは咲子の手をはなさない。そのとき、咲子はこう言ったのだ。
「おばちゃん、また明日お話を聞かせて」
 と。
 翌日、原町のおばあちゃんがやってくると、咲子はにこにこ笑って原町のおばあちゃんを迎えた。
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