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千一夜
第46章 第七夜 訪問者 既視感
 体が重い。心の中が薄暗くなったのに、なぜか香坂が言った「どこかで会った気がする」という言葉が、体の真ん中で不気味に響いている。
 香坂は私の秘密の場所を知らないはずだ。あそこにいたのは私と“女”(沢田絵里)そして咲子……、それに思い出したくはないが、私の知らない男が二人。
 まさか私の並行時空を香坂が見たとか……。あり得ない。
 どうして私はこんな煩わしい思いをしなければならないのだろうか。咲子と結婚するから、いや違う。私は咲子と一緒になりたい。市長選? それも違う。香坂が言うように圧勝するかしないかは別として、私は必ず市長になる。ハードルなんて高くはない。
 一つ一つを潰していけば自ずと答えが見つかる。
「どなたかお待ちのようですね」
 タクシーの運転手がそう言った。
「……」
 タクシーの中から私の家が見えた。郊外と言えば聞こえはいいが、私の家の周りには何もなくて、私の小さな家がぽつんと建っているだけだ。
 家の前に車が止まっていた。私の小さな家には似つかわしくない高級車。私はその車に見覚えがある。
「ありがとうございました」
 私はそう言って車を降りた。
 レクサスの運転席から竹内が降りて「こんばんは」と私に挨拶をした。それから竹内は後部座席のドアを開けた。咲子が後ろの席から降りてきた。
「長谷川さん、どこに行ってたの?」
 人の声とか話し方というものは不思議だ。今咲子は機嫌がよくない。
「香坂とラーメンを食べてました」
「ラーメン? あれだけ食べたのに?」
「緊張のせいで食べた気がしないと言ってました。役所の職員が咲子さんのお父さんと食事する機会なんてないですから」
「でもあの人全部ぺろりと食べていたような気がするんだけど」
「ははは。香坂は同期の中で一番の大食漢です」
「女性なのに?」
「大食漢に男と女は関係なしです。それより、こんなところでは何ですから中に入りましょう。狭いところですが竹内さんもどうぞお入りください」
「いえ、私は用がございまして」
「一時間後に迎えに来て」
 咲子がすかさずそう言った。
「申し訳ございません、お嬢様。少し時間がかかりますので二時間後にお迎えに参ります」
「じゃあ二時間後」
「それでは二時間後に参ります」
 竹内は二時間という時間を強調した。
 私と咲子はレクサスを見送った。


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