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第2章 flower

「実際は無理ですよね。まさに安っぽいメロドラマの世界です。ただ私が言いたいのはあくまで数字上の理論です」
「＿＿＿＿＿＿＿」

何故か左隣に座る老婆の深刻な言葉をポツリポツリと落としているのが聞こえる。

もう、、駄目ね、、と。

「、、一人前の医者になるのに約十年。学者　研究者まで行く着くのに早くて二十年と言われています。それに掛かる金額はざっと約三千万。更に政治的なお金を含めればゆうに一億は下らない。お金はね、これも何かの縁です。私が美里さんに投資してもいい」
「＿＿＿＿＿」
「あくまで冗談ですよ。第一そんな大金は私にはありません」
渡辺は笑うも、どこか試されているような美里は笑えない。
「、、、、」
「私がね、私が言いたいのはあくまでその机上の数字です」
「、、、、机上の数字」
渡辺はいつになく厳しい表情をしている。
「数字的には十分可能ですよね。貴方はまだ若い。間に合う」
「、、、、」
「貴方にだって夢とまでは行かなくててもやりたい事は多々あるでしょう。ただ年齢という絶対的な数字に無理な事もあります。そう、、何事にもタイムリミットはあるんですよ。現実的にお金という、やはり絶対的な数字の問題もある。いくら理想を叫ぼうが所詮人生なんて実に様々な数字が転がって至ってロジカルなものなんです。それを計算あるいは逆算してみたら必ず答えはあります」
「、、どうやって、、、、出せば、、」
「、、残念ながらその数式は分かりません。掛け算か割り算か、引き算か、足し算か、高度かつ複雑な計算式かさえも分からない。もっと言えば一年の「1」を「３６５」と日にちで計算する人、、さら言えば「２４」時間という数字で計算する人、、それは個々辿った人生、、いや、、その時々の瞬間や体感で明らかに違います。まぁ、、天才アインシュタインの法則ですがね」
「数字、、」
「とにかく一番怖いのは終わりが見えない事ですよ。終わりがない、これは暗闇です。こんなに怖く恐ろしい事はない」
「、、終わりがない」
「確かに一般的な答えはありません。ならば自らが計算式を作るしかありません」
「つまり、、時間をですか？」
「残酷ですが、、タイムリミットですかね」
「、、、、タイムリミット」
「美里さん。冷たいようですが夫婦など所詮は他人なんですよ」