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100のベッドシーン
第18章 書けなかった一行を、あなたがくれた
「ワインでも、大丈夫ですか?」

キッチンでそう聞かれて、私はこくりと頷いた。

グラスに注がれた深い赤を見つめながら、思ったよりもこの部屋が落ち着くことに気づく。

遼さんの部屋には音楽もテレビもなくて、ただ湯気と、淡い照明と、彼の声だけがある。

まるで、言葉を扱う人の生活そのものみたいな、静けさ。

「編集って、不思議ですよね」

グラスを軽く揺らしながら、私が言った。

本音ではない。

でも、少し酔っていたのかもしれない。

ほんの少しだけ、気が緩んでいた。

「本を書かない人間が、作品を支えているっていう、その感じ」

「でも、編集者がいないと、書けないんですよ。少なくとも、僕は」
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