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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
根本にあるのはきっと、子供の幸せを願う気持ちだ。
「あたしは……っ」
桃華は強い口調で言いかけるも、押し黙り、唇を噛む。
続けようとしたのは、きっと否定の言葉なのだろうと思った。
故郷での暮らしが窮屈だったこと。桃華はきちんと家族に伝えられたのだろうか。
秋広はその先は聞かなかった。
「ーー桃華さんは、どうしたら幸せになれますか? どういうふうに生きたら、幸せですか? 今は?」
過去の自分を不幸だったと言いきってしまうのは、それはそれで悲しい気がした。
せめてこれから先は、桃華に幸せになってほしい。そんな思いが秋広の胸に溢れていた。
「どうだろ……」
なんとも言えない切なげな顔で、桃華は呟いた。
「秋広は?」
問われて、衝動のように何度も沸き上がってくる思いを告げていた。
「ーー僕は、桃華さんに暖かい部屋で過ごしてほしいです……っ。たくさん働いて帰ってきたら、熱々のお風呂に浸かって、炊きたてのご飯を食べてほしい……一緒に……っ」
そこまで言って、秋広はかあっと耳まで真っ赤になった。
これではまるでプロポーズのようだ。
結婚とかそういうのを嫌がっているとこの間聞いたばかりなのに。
恥ずかしさと、切り捨てられるのでは、という恐怖とで秋広は居たたまれなくなり、すっくと立ち上がった。
「では、失礼します!」
「……は?」
「ごちそうさまでした!」
秋広はそのまま玄関を飛び出した。
鍋を持った大家がすぐ目の前に居たが、立ち止まってる余裕もなく、会釈のみで大家の横を駆けていく。
初の告白まがいなことをしてしまった秋広は、返事を聞くことのないまま逃げ出した。

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