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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
そこで秋広ははっとして口をつぐんだ。
今のやり取りの中で、桃華が嫌がるだろう単語を混ぜてしまった。
「女だから、なんだよ?」
桃華の灰色の瞳が不機嫌そうに細められる。
「すぐそれを理由にされんの、好きじゃない」
「そういうつもりは……」
「……昔からずっと、そればっか言われてきてうんざりなんだよ」
声を荒げはしなかったが、怒りの感情が伝わってくる。
この前聞いた、窮屈だという東北の実家での話に、女であるがゆえのトラブルはよく出てきた。面接の時のやり取りからも、彼女が女性であることで差別されるのを極端に嫌がっている節があった。
わかっていたのに、つい差別的な発言をしてしまった。
「すみません……」
秋広はうなだれた。もっと違うふうに伝えたかった。自分はたた、桃華に温かいシャワーを浴びてほしかっただけだ。
「『女の幸せは嫁に行くこと』。そんなふうに考えて桃華さんのお母さんとお父さんはお見合いの話を持ってきたって言ってましたよね、この前。……それって、桃華さんの幸せを願ってのこと、でしょ?」
それが桃華にとっては窮屈だったとしても。
秋広は、同じだと思った。自分の母親が自分を料理や家事から離れさせ、外で遊ぶよう仕向け、工業高校を勧めた理由と。

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