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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

ーー面接、通してしまった。
秋広ははっと我に返った。
会社のことも理解してくれていたし、腕力もある。何よりも、ここで働きたいという強い意志が彼女自身にあるのなら、断る理由はないのかもしれない。
だがやはり、ここで働いている女性スタッフを秋広は知らないので、異例であることに間違いはない。
秋広は、すぐ社長に電話をした。
「ーーいいんじゃない? 働いてもらってみたら」
たった今行われていたほんの十分にも満たない面接の結果を社長に伝えると、のほほんとした声でそんなふうに返ってきた。
建設会社の社長である藤巻(ふじまき)は、意外にも気さくで相談しやすく穏やかな調子で話す人だった。
この会社に入社した時は社長自ら面接をしてくれたが、第一印象は「中学の時の校長先生に似てるなあ」だった。
極度の緊張しいだった秋広がここに入社できたのも、藤巻社長のその第一印象のおかげでリラックスして面接に挑めた、というのが大きいかもしれない。
「その子、どんな子だった? 家族は? ご結婚はしてるのかな? 小さい子供さんとかいるとね、大変だよね。あと自動車免許はある? いろんな現場に行ってもらうことになるからねえ」
「あ、えっと……」
秋広は慌てた。そういえば、家族構成も自動車免許の有無も、必要なことを何一つ聞いていなかったことに今になって気付く。

