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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 大変だろう、という部分はやんわりと濁した。
 だが香椎と名乗った女性は、表情一つ変えずに言う。

「求人に女性がダメとは一言も書いてませんでした」
「え……そ、そうでしたっけ?」

 こちらの部にまわされて、初めて求人広告を秋広自身でデザインした。
 指摘されて思い起こしてみると、確かに男性のみの募集とは明記しなかったかもしれない。
 しかし、である。秋広自身が現場で何年もやってきたのだ。その過酷さは身に染みてわかっている。
 男性女性は身体の作りだって違うし、男の自分がキツかったのだからこの女性に勤まるとは思えなかった。体を壊してしまったり自分のように高い場所から落ちて怪我をしてしまったら。それどころか、万が一なんてことになってしまったら。
 この女性の家族は、ものすごく悲しむのではないかと思う。
 秋広は、肩を骨折した日、泣きながら運ばれた病院に飛び込んできた母の姿を思い出し、震えそうになった。
 それから目前の女性を見据え、言う。

「やっぱり僕には、そんな酷いことできません!」
「…………は?」

 灰色の瞳は何か得たいのしれない生き物でも見るように、細められた。
 つかの間の沈黙。

 唐突に桃華と名乗った女性は着ていた黒いジャケットを脱ぎ椅子の背もたれにかけた。
 その下は白いブラウスだった。立ち上がり、黒のスラックスと黒いパンプスも露になる。
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