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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

「へ?」
突然上を脱いで立ち上がり、自分の方に歩いてくる桃華に秋広は心底びびった。
薄いブラウスの中に白い肌と黒いタンクトップが透けていて、秋広は反射的に顔を背けてしまう。
どういうつもりなのだろうか。とにかく、女性を直視してはいけない、と思い、秋広は目をつぶる。
桃華は秋広の目前までくると、右側の袖をばっと捲った。
おそるおそる目を開ける秋広。
「……?」
「腕っぷしには自信があります」
同時にすっと構えられた右腕。
「あんたに腕相撲で勝ったら、雇ってください」
「腕……相撲?」
ポカンとなる秋広。早く、と促され、秋広も構える。
手を握られ、秋広の心臓は早鐘を打ち始める。
(女性と手を繋いでいる……手汗、手汗大丈夫かな!)
「ーーよーい、どん」
一瞬だった。秋広が力を入れる前に負けていた。
「……真面目にやれや」
「……は、はい」
もう面接官と面接を受ける人、という構図でもなくなっていた。
桃華は立ち上がり、まるで虫けらでも見るように見下してくる。
すぐに手を繋ぎ直され、桃華のかけ声で二戦目が開始された。
女性の手を握ることにびびっている場合ではない。ここで自分が勝てば、危険な仕事をこの女性にさせなくてすむのだ。心を鬼にしなくては。

