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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 就職して五年になろうという頃だった。秋広は誤って施工中の建物の二階から足を踏み外し、落ちてしまった。幸い肩の骨折だけで済んだが、全治二ヶ月の大怪我。その後もリハビリは必要で、復帰は難しかった。
 ーーやっぱり自分には、この業界は向いていないのかもしれない。
 秋広は初めて辞職を決意した。それが転機だった。
 秋広の頑張りを認めていた社長が、現場から人事部に移らないかと提案してきたのだ。
 給料はだいぶ下がってしまうが、従業員の入れ替わりが激しい業界のため、正社員だけでなく、派遣や日雇いなど様々な雇用形態で働き手を募集しているという。主に、働き手の募集とその面接、またもし何か現場で揉め事があった時に、従業員達の話を聞いてほしい、と言われた。
 秋広は、こんな自分でも働かせてくれるなら、と喜んで引き受けたのだった。
 そして、今も応募してきた人の面接を始めるところ、なのだが。

「ーー香椎桃華(かしいももか)と申します。よろしくお願い致します」

 そう言って頭を下げてきた目の前の人物は、どこをどう見ても『女性』だった。
 それも、秋広が今まで見たことがないほどの美人だった。
 肩まである漆黒の髪。くっきりと二重の目は、珍しい灰色をしていた。目の前の女性はまるで精巧な作り物のように、左右対称の顔をしている。
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