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Memory of Night 2
第47章 春の訪れ

それはまあわかるが。
満身創痍の千鶴を見て、さぞ驚いただろう。久しぶりの娘との再会でこんな大怪我をしていたら、それこそ何事かと思われ心配されるのではないかと思う。
それでも二十年ぶりだ。千鶴に会えて、嬉しかったのではないかと思う。自分の子を嫌う親なんていない。志穂の言葉を宵は思い出していた。
「ついでに結婚することも伝えた」
付け加えるようなニュアンスに、宵はつい呆れたような顔を千鶴に向けてしまう。
「……そんな大事なことついでで伝えんな。……反対されなかった?」
千鶴はわずかに間をあけた。やがて、小さく頷く。
「されてもシカトしてやろうと思ってたけどーー全然されなかった。おめでとう、だって」
茶の瞳を細め、どこか他人事のように、千鶴は言う。
桃華が出ていったきっかけも、そっち絡みだった。性別にこだわり、結婚にこだわり、元を辿ればそのせいで娘を失ってしまったようなものだ。
妹である千鶴の選択やその相手に、今さら反対などしないか、と思う。
「二十年ぶりに会ったら、二人ともなんかすげー老けてたけどーー大きな荷物を下ろしたあとみたいに、柔らかい顔つきになってたよ」
「ふーん。……歳取るとまるくなる、みたいなの言うしな」

