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Memory of Night 2
第47章 春の訪れ

墓参りに向かう途中、志穂に聞いた話を千鶴にもした。ずっと気になっていた秋広と桃華の離婚理由と、不倫が未遂だったこともかいつまんで話したが、千鶴は特に驚きはしなかった。
「合ってた? あんたが予想してた理由と」
千鶴は頷いた。
「……桃華とは取ってなかったけど、母親とはたまに連絡取ってたからな。工場の経営が危ないことも知ってたよ。赤字で首が回らないなら、さっさと自己破産してたたんじまえば良かったのに」
「……従業員もいたから、できなかったんじゃねーの?」
「……は? なんで?」
「雇ってんだろ?」
「雇ってるって言っても、たった三人だぞ? しかもあのジジイ達、あたしが子供の頃からずっと働いてるし、もういい歳のはず。多分七十過ぎてるぞ? 子供だってとっくに巣だってるだろうし、仕事なんていつ辞めたっていい年齢なんだよ」
「え、そーなの?」
志穂から聞いた話と、実際身内である千鶴から聞く話は、少し違う。
「だいたい、自分の子供の中に跡継ぎもいないんだから、さっさと外から見つけてくるか工場自体をどこかに売るかすれば良かったんだ。そうすれば、経営からは離れられた。そうできなかったのは、見栄やプライドがあったからだろ? ーー引き時もわからず意固地になって現場に留まることに固執しているなんて、経営者として器が足りないだけだと思うけどね」

