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Memory of Night 2
第47章 春の訪れ

 千鶴のやや垂れ目なところや瞳の大きさが強調され、若く見える。

「退院して戻ったら、捨てられてたんだよ、亮に」
「何を?」
「あたしの服! 全部!」

 千鶴は苛立ったようにハンドルを叩いた。

「替わりにあいつ好みの服ばっかずらっと! もう、ふざけんなよ!」
「……いいじゃん、そういう格好の方があんたに似合うと思うけど」
「そういう問題じゃない! 十万以上するハイブラだってあったんだぞ!」
「高っ……」

 千鶴の私服をそんなに何着も知らないが、そんなに上質なものだったのだろうか、と思う。

(趣味悪……)

 つい本音が溢れそうになるも、ぐっと飲み込む。宵はあるものを差し出した。

「あと、これ」
「……ん?」
「タバコ」

 宵が差し出したのは、電子タバコだった。ニコチンの代わりに水蒸気が出る。タバコのように体に害はない。

「洞穴の中で、あんたのタバコ捨てちまったから。出られたら買って返すって言ったじゃん」
「……」

 千鶴はちらりと宵が持つ電子タバコを見たが、何も言わなかった。
 電子タバコというよりは禁煙するためのものだった。やっぱりそれでは気に入らないだろうか、と思う。
 だけど、できることなら体のためにもタバコは控えてほしい。もちろん酒も。

「ありがとう。口に合うかわかんないけど、一応貰っとく」
「……普通に受け取れ。一言余分なんだよ」

 宵はつい苦笑いを漏らした。
 どんなに外見が変わろうと、中身は千鶴のままだ。それが会って数分でいくつも垣間見れ、少しほっとしていた。
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