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Memory of Night 2
第46章 想い人

(ここは幼稚園か……?)
テンションの激しさにもついていけず、宵はつい、ため息を漏らした。
ーーまあ、志穂のそれは嬉し泣き以外の何物でもないので良いのだけど。
「じゃ、そろそろ帰る」
「あ、お昼は……」
「午後ちょっと予定あって。またゆっくり来るよ。アイスティーごちそうさま」
「あんなの、いつだって……。それよりこれ、結構なお値段したんじゃないの?」
志穂は芽衣に持たせたテディベアを目線で示した。
白いぬいぐるみを気に入ったのか、芽衣はぎゅっと抱え込んだまま離さず、いつの間にか泣き止んでいた。
「あー、多分そんなに。それ、晃の手作り」
「ええ……!?」
「あ、あぁ……」
声に驚いたのか、また芽衣の顔がくしゃりと歪む。
志穂はよしよしと、腕の中にすっぽりおさまってしまうほどの、小さな体を揺すった。
「なんて器用な子……だって、受験終えたばかりで大変なんじゃないの? 東京の医大でしょ?」
「住むとこ決めにこの前も母親と東京行ってたっぽいけど、なんか夜なべしてそれ作ってたよ」
こっそり作業していたつもりらしいが、明かりが漏れていたので覗いてみてしまった。狭いベッドの中、隣にあるはずの気配が無くなると、つい探してしまう。
「ーーありがとう。本当にありがとう……! とっても嬉しい! 晃くんにお礼、ちゃんと伝えてね!」
「わかったから、あーもーまた泣くなって」
ティッシュを渡そうとするも、両腕が芽衣で塞がっている。
宵は仕方なく、ティッシュで志穂の涙と鼻水を拭いてやった。
もう垂れそうな勢いだった。

