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Memory of Night 2
第46章 想い人

その名前に、宵は思い出して隣に置いていた紙袋をごそごそと漁った。
「その、晃から。これ、出産祝いだって」
「え? そんなのわざわざーーまあ!」
志穂は言いかけて、宵が紙袋から取り出したものが視界に入った瞬間目を見開いて叫んでいた。
「可愛い……っ!」
それは白いテディベアのぬいぐるみだった。子供なら、ちょうど胸に抱えられるくらいのサイズでふんわりとしたりぼんがついている。
志穂は嬉しそうに受け取ったが、持ってみた感覚に違和感を覚えたようで、くるりと手の中でテディベアを回転させた。
「背中にチャック?」
「それ、ただのぬいぐるみじゃなくて、ベビーリュックだって。中にオムツとかちょっとした小物入れれるっぽい。これ、ヒモ」
宵が後付けできるベルトを手渡す。
「ぬいぐるみとして使ってもいいし、一緒に出かける時に志穂さんが使ってもいいしーー芽衣が自分で歩けるようになったら背負(しょ)わせても可愛……」
そこで宵は、唖然とする。
志穂の目から大粒の涙がポロポロと溢れていたからだ。ティッシュを鷲掴み、わっと声をあげて号泣してしまい、宵はぎょっとした。
(もうガチ泣きじゃん……)
泣かれるのは慣れているが、大声をあげながら号泣されるのは初めてだった。
だがそれに突っ込む暇もなく、今度は奥の部屋からも芽衣の泣き声が響いてきた。再び起きたらしい。
志穂と宵は慌てて隣の部屋のベビーベッドに向かう。
「芽衣ー!」
泣きわめく芽衣を抱き、抱きしめる志穂もまだわんわんと泣いている。
親子揃ってそんな状態のため、部屋は賑やかだった。

