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Memory of Night 2
第46章 想い人

 それを真似するように、芽衣もテディベアに顔を押し付ける。一瞬で鼻水とよだれまみれだ。

「ああ、せっかく晃くんが……」
「あ、それ普通に洗える。ネットに入れて洗濯機で。なんか、裏返しにして干せば乾きやすい素材選んだんだって」
「まあ、なんてできる子……っ」

 デザイン、機能性共に優れた素敵な出産祝いだなあと宵も思う。

「じゃ、また」
「あ、うん」

 芽衣を抱いたまま玄関に向かう。さらに向こうまで送ってくれようとする志穂を、宵は止めた。

「ここで平気。さすがにその顔で外出るな」
「……酷いっ」

 志穂は頬を膨らませるが、号泣したあとだしそりゃ酷い。

「また顔見せに寄りなさいよ」
「はいはい」
「あ、卒業アルバムできたら見せてね!」
「まだ届いてねーって。届いたら見せにくるよ」

 卒業アルバムは郵送で、四月頃届くらしい。

「じゃあね、ありがとう、宵」
「うん、こっちこそいろいろ話聞かせてくれてありがとう。また。……芽衣も、バイバイ」

 そっと手を振ると、芽衣も小さな手を伸ばしてくる。宵が手を近づけると、人差し指をぎゅっと握られた。小さくても握力はちゃんとあるんだなあと思う。
 そうして二人の家族に見送られ、外に出る。
 マンションの七階に吹く風は、思いのほか優しかった。
 宵はそのまま下を覗いた。赤いスポーツカーが路肩に停まっているのが見える。

(早っ)

 連絡して十五分くらいだ。
 今日はこのあと千鶴と約束があるのだった。
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