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Memory of Night 2
第46章 想い人

 東北は遠い場所だった。真っ白な雪景色は、宵が産まれ育った場所ではなかなか見ることができない風景だ。
 もし離婚後そんなとても遠い場所に母がいると知っていたら、それでも会いにいこうとしてしまったかもしれない。
 だからあえて、何も話さなかった。
 それだけじゃなく、桃華があれほどキツイ仕事を選び続けていたのも工場のためかと思えば納得がいった。
 父に家事全般を任せ、男ばかりの職場に、夜遅くまで働きに出ていた。
 だが別に、贅沢な暮らしをしていたかと言うとそんなことはない。桃華自身、浪費することはなかった。服装はいつもティーシャツとジーンズだし、化粧すらしない。
 もしもの時のために、蓄えていたのかもしれない。

「ーーなんで二人が死んだあと、俺を引き取ろうと思ったの? 親父と会ったのその一回なんだろ?」
「二回……かな。何日か経ったあと、お詫びにっていろいろいただいちゃって」
「たった二回じゃん。ガチな不倫ですらなかったし、なんでそこまでして……」
「子供に罪はないもの」

 志穂は静かに言った。

「あなたは何も悪くない。なのに、不運な事故で両親を失って、引き取れる身内もいないって知って、そ、そんなの……っ」
「……だからすぐ泣くな」

 また志穂の目から大粒の涙が浮かぶ。
 宵は苦笑した。

「ーーまったく、お人好しすぎなんだよ」

 知らない酔っぱらいに声をかけ、話を聞いてしまったばかりにその男の子供を育てるはめになった。端から聞いたら志穂の方が不運だ。
 なのに、そんな状況でも自分を幸せだと思える。どれほどおめでたい性格なのか。
 お人好し、という言葉にむっとした志穂が何かを言い返そうてしてきたが、その前に宵は続ける。

「でもそういうとこ好きだよ」

 志穂は驚いたように目を見開いた。

「あら。そんな素直な言葉初めてね」

 そして、微笑を浮かべる。

「ーー前に会った時から思ってたけど、最近よく笑うようになった気がする」
「……そうか?」

 自分じゃあまりわからない。
 志穂は大きく頷いた。

「晃くんのおかげかしらね」
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