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Memory of Night 2
第46章 想い人

一連の話に謝られる内容なんてあったろうか。
「……それ、酔ってる親父とバーで出会った時の話だろ? そうじゃなくて……」
だんだんとこのやり取りそのものが面倒になってきた。どうせ傷つけるなら、もういいや、とドがつくほどの直球さで宵は尋ねた。
「親父とセックスしたのいつ? なんでそういう関係になったの?」
志穂は今度こそ目玉が飛び出しそうなほど、大きく見開いた。
「せ……!?」
みるみる顔が真っ赤になり、火でも噴きそうなほどだった。
「な、何言ってるの! そんなこと、あなたのお父さんとするわけないでしょう!?」
「……え?」
今度は宵が拍子抜けする番だった。セックスはしていない? 話がまったく志穂と噛み合わなすぎて、意味がよくわからない。
「だって……言ってたじゃん。寝たって。子供もいるってわかってたのに、って」
志穂に始めて会った日だ。病院に横たわる両親の遺体を前に、泣いていた日。
病室に飛び込んできた志穂は、まだ十歳だった宵を抱きしめ泣きながら詫びていた。
あの頃は寝た、の意味をよく理解できなかったが、今ならばわかる。不倫したとも口にしていた。
なのに、お互いに好意もなくセックスもしていないというのはどういう意味なのか。

