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Memory of Night 2
第46章 想い人

「好きって、秋広さんを? まさか! だって、秋広さんには最愛の奥さんがいたのよ! 秋広さんはそりゃあもう、あなたのお母さんのことが大好きだったんだから!
そんな素敵な家族がいるのに、わたしが秋広さんを好きになるわけないでしょう?」
「……は? じゃあ、親父が志穂さんを?」
それこそ志穂はめっそうもない、と両手を顔の前でひらひらさせて否定した。
「だから、秋広さんは桃華さん一筋だったの! わたしを好きになるわけないんだってば」
「…………はあ!? じゃあ、なんで不倫なんてしたわけ?」
だっておかしい。お互いに好意がないならなぜ、そんなことになったのか。酔った勢いで、なのかと思ったが、志穂はそもそもお酒を飲んですらいないという。
秋広がシラフの志穂を口説いたのだろうか。好きでもないのに? 酔っていたとはいえ、そんなことができるだろうか。
志穂は泣きそうな顔でうつむいた。
しまった、と思う。つい、遠慮なくずけずけ聞いてしまった。傷つけてしまったろうか、と思う。
志穂は落ち込んだトーンでその日のことを語る。
「酔って、秋広さん帰れなくなっちゃって。バーの店員さんにもこの人どうにかしてくれって言われて。そのままお店に置いておくわけにもいかなくて、どうにかタクシー拾って、バーから連れ出したの。ーーごめんなさい」
「……え、何が?」

