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Memory of Night 2
第46章 想い人

「……親父、母さんとなんかあったんかな」
ふいに思い至った。
志穂はあっさりと頷いた。
「うん、そう言ってた」
「話したの?」
「ええ」
短い首肯と共に、その後の細かい状況を教えてくれた。
なんでも、号泣する秋広の様子がどうしても気になり、志穂は忘れ物をしたと嘘をつき、一人バーに戻ったのだという。
ーーどうか、されたんですか? 何か辛いことでもありましたか?
それで、まだカウンターに突っ伏して泣いている秋広にそう声をかけたと。
「ーーああ、その時か」
宵は納得した。心が弱っている時に声をかけられたら、一瞬でも気持ちは移ってしまうものなのかもしれない。志穂も同じで、男らしくない秋広は、頼りがいはないが母性本能をくすぐるタイプだよなあとは思う。
泣いている秋広を放っておけず、志穂が声をかけ、そこからお互いの情が移ってしまった可能性は充分あり得る。
「それで好きになっちゃったんだ」
宵が結論を推測して言うと、志穂はポカンとなった。
「…………え?」
「えって……その出来事がきっかけで、情が移って親父のこと好きになったんじゃねーの?」
直球に尋ねると、志穂は目を見開き、ぶんぶんと首を振った。

