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Memory of Night 2
第46章 想い人

 冷蔵庫を開ける志穂の横顔が、ふいにアパートに住んでいた頃の彼女の顔と重なった。
 倒れる前日の、やつれた頬と真っ青な唇。冷蔵庫の扉を開けたまま座り込んでしまった志穂に、当時まだ中学二年生だった自分はどう声をかけたっけ、と思う。

「……大丈夫、ちょっと疲れただけ」

 弱々しい言葉も笑顔も、素直に受け入れてしまっていた。
 大丈夫なはずはなかっただろうに。パートをかけもちしていた志穂は、当時ほとんど休みなく働いていた。平日も休日も、帰ってくるのはいつも日付が変わる頃。もともと体が弱い志穂には、なおさら辛い生活だったはずだ。
 服の下のギスギスした腕も、食べたものを吐き戻してしまうほどの発作も、サインなら、いくらだってあったのだ。
 それに気付けず、倒れるまでそんな生活を続けさせてしまった。
 仕事中に倒れ、病院のベッドに横たわっていた点滴だらけの志穂の腕は、枯れ枝のように細かった。
 なんの弱音も吐かなかった志穂にも、毎日顔を合わせていて、そんな状態になるまで気付けなかった自分自身にも苛立ってどうしようもなかった。
 ……言ってくれたら。自分が限界を迎える前に、手放してくれていたら。

「ーーあ、ねえ、アイスティーもあった! 今日ちょっと暑いしこっちにする?」
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