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Memory of Night 2
第46章 想い人

「ーーっ!」

 宵は勢いよく跳ね起きた。
 そこは自室のベッドの上で、全てが夢だったことを知る。

「……宵」

 隣で名前を呼ばれた。秋広でも桃華でもなく、晃だった。晃も起き上がり、そっと抱きしめられる。

「怖い夢を見たの?」

 宵は頷いた。怖くて、悲しい夢だった。心臓がバクバクとうるさい。
 宵は晃の背に自分の腕をまわし、寄りかかる。

「夜中に驚かせてごめん。嫌な夢見ちまっただけだから」
「大丈夫。落ち着くまでこうしてるから」

 抱きしめられた体勢のまま背中をさすられる。ふいにその仕草が、小さい頃秋広にされていたものと重なった。
 優しい声で桃華の昔話をしながら布団越しにポンポン、と叩かれた。その思い出が、どうしようもない気持ちにさせる。
 ーー結末は変わらない。真実を知ったって、何を確かめたって、桃華と秋広がこの世にいない事実は変えようがないのだ。
 だがそれでも、宵は本当のことを知りたいと思った。あの頃の秋広の、桃華に向けていた笑顔や、桃華の話を自分にする時の慈愛に満ちた顔が、偽りだとはどうしても思えないーー。

「……明後日の昼間、志穂さんとこ行ってくる」
「妹さんに会いに?」
「うん、もちろんそれもあるけどーーいろんなこと確かめに」

 言葉足らずではあると思う。少し気持ちが落ち着いたら、ちゃんと話そうとは思っていた。晃にも、身内である千鶴にも。
 晃は宵の体をそっと自分から離した。
 そうして唇に触れるだけのキスをされると、不思議なくらい勇気付けられる気がした。

「ーー行ってらっしゃい」

 送り出す声も、闇に溶けるくらいに柔らかく、温かく響いた。
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