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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
「ーーあたし、間違ってた?」
本音を伝えられなかったこと。伝える努力をせずに家を飛び出してきてしまったこと。
後悔はしていない。ただ、あれで良かったのかは桃華にはわからなかった。
「なぁに言ってんだい、モモちゃんは間違っちゃいないよ!」
背中をバシッと叩かれる。
「モモちゃんも、モモちゃんのお母さんもお父さんも、なぁんにも間違っちゃいないんだよ。正しくも悪くもない。あたし達が当たり前だと思っていたことが、モモちゃんには少し窮屈だっただけだ。ーーモモちゃんにはモモちゃんの生き方があるんだよ。あっていいんだ」
「……生き方、ねー」
桃華は髪をかきあげた。
そんな大層なものはない。ただ、なんとなく思い描くものならあった。
「最初の方の話題に戻ろうかね。単刀直入に聞いちゃうけど、秋広さんはどうだい? あの人なら、モモちゃんの生きたいようにさせてくれる気がするがね」
「そうかもねー」
「秋広さんが待つ家に帰るのは、いやかい?」
桃華は目を閉じた。
玄関に灯った明かり。ドアを開けると漂ってくる夕食の匂い。暖かい部屋。ーーおかえりなさい。秋広なら毎日、優しい声と笑顔で迎えてくれるような気がした。
さっき料理を作っていた背中が、妙に恋しかった。
ーー言い逃げして出ていってしまった彼を追いかけようか、本当は迷っていた。
「答えは出たかい?」
ふぉっふぉっふぉ、とまた笑う。
「ーーうん」
「頼りなくたっていいんだよ。モモちゃんがリードしてあげれば」
「……うん」
桃華は小さく頷き、笑った。

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