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息子の嫁
第22章 退職届
「あらっ!まだ食べてなかったの?」

生ビールを一口飲んだ後、彼女が私に訊いた。

「麗奈と、一緒に晩酌をしたかったから待ってたんだ。」

「だって熱燗だって全然、呑んでないじゃあない……。」


最初は、冷たい生ビールをって私は決めてたし、彼女を待ってる間に、熱燗は冷めてしまってた。


「独りでの晩酌は、楽しくないだろう?」

「そりゃそうだけど……。」

「麗奈…。聞いてもいいかい?」

「訊くって?」

「麗奈は今日、一日どう過ごしてたんだい?正直に話してごらん…。」


今日のことを、何も聞こうともしない彼女に私は訊いた。


「私ねえ…。今朝、駿を見送った後、例えどんないきさつでも長年勤めた職場を辞めることにした駿は、どんなに悔しいだろうなって、そればかりかを考えてたの……。」

「そうか…。だから私を出迎えた時、ああ云ったのかい?」

「だって私――駿を慰めて上げたくて…。だから――」

「じゃあ、浴衣じゃなくバスタオルにしたのもそうなのかい?」


彼女が頷いた。

彼女が小芝居をしてでも、私を慰めて上げようと考えていたことを知り私は、彼女の優しさが嬉しかった。

彼女が話してくれた後、私も本当は退職届が受理された後、直ぐにでも彼女が待つ我が家に帰りたかったが、早く帰ると彼女に、心配をかけると想い帰ることを思い止まったことを彼女に教えた。


「帰って来ても良かったのに……。じゃあ辛かったでしょう?」


確かに職場では辛く、それがとても長くも感じれたが、しかし今は悔しいと言う気持ちが私にはなかった。

それは、私が辞めたことで私達が、夢の実現に一歩踏み出すことが出来てたからだった。
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