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息子の嫁
第22章 退職届
折角、彼女が作ってくれた美味しい、カレーをここのところ色々あって私は味わって食べてない気がし、そのことを彼女にも話した。

「ヤダ――その事は云わないって、約束したでしょう……。」


私が大きな声で笑った。


「私、一生云われそう――」


そう云い凹み、しょげてた。


「じゃあ、何時もより美味しく作るから早く帰って来てね…。」


そう云い、私を見送ってくれた。

職場に付き、朝礼の時間になった。

何時ものように朝礼は係長に任せ私も、部下達と一緒に列に並び彼の言葉は聞いた。

朝礼が終わった後、私は自分のディスクに戻り退職届けを書いたが、決まった文面とはいえ何故かスラスラと書けた。

あれほど憎んでた上司にも、何とも想わず書いた退職届けを手渡す事も出来た。


「立花さん…。次の仕事先は決まっているのかい?」

私が「いいえ」と答えた。

「長年、税務課で働いて来た君なら、欲しいと言うところは幾らでもあるんだが、どうだい?」


彼は私に、転職を進めたが私は、それを断り部屋を出た。

それから自分の、ディスクに戻り係長を呼び彼に、退職届けが受理された事を話したが彼は、私が肩たたきにあってたことを知ってたようだった。


「そうですか――残念です。他の職員には話されますか?」


彼が私に、そう訊いたが私は黙っているよう彼に言った。

本来なら、課だけでも送別会って話しもなるのだが私は、知人や部下達にも挨拶すらしなかった。

彼が私のディスクから離れた後、私は静かに自分の私物を整理し始めた。

私物と言っても、たいした物もなく、それにも時間はかからなかった。
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