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第22章 退職届

これまで、何の落ち度もなく勤めた役所をやめなければならない悔しさが私には、あった。

上司に云われるままに、退職届けを出すことに我慢がならなかった。


「麗奈…。毎日、私と一緒に居たら飽きないかい？」

「じゃあ駿は毎日、麗奈と一緒に居て飽きるの？」


私は、彼女と一緒に居ることじたいが、奇跡にも想えたし、そうして居ることが今でも夢のように感じてた。


「麗奈…。」


何時もと違う、私の様子を心配し彼女が云った。


「駿…。私の胸が必要？」


その後、私は彼女を抱き寄せ、抱き寄せた彼女のえりを涙で濡らし声を、押し殺すように泣いた。

そんな私の頭を、彼女は黙って撫でていた。


「駿…。声を出して泣いていいのよ……。」


彼女の、その一言がこれまで押さえていたものを崩壊させ私は、肩を震わせ彼女の胸で声を出し泣いた。

それが、男泣きといえるのかどうか、それは当事者の私にも分かってはいなかったが彼女と、愛し合うようになり彼女に、始めて見せた私の弱さだった。

彼女は、黙って私の頭を優しく撫でていた。

暫くし私が、泣き止むとスッとソファーから立ち上がり部屋を出ていった。

それから少し、白いタオルを手に彼女が部屋へ戻った。


「駿」私の名前を呼び再び、ソファーに座ると涙で濡れた私の顔を、温かいタオルで拭いた。


「どう…。気持ちいい？」

「ありがとう麗奈…。恥ずかしいところを見せてしまったね？」

「ううん…。私は、そう云う駿が好きなの……。」

「麗奈は、私には勿体ないくらいのいい女だよ…。」

「それは、私の云う台詞だよ…。駿は、私には勿体ないくらいの、とっても素敵な旦那さまなんだから……。」