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哀色夜伽草紙
第11章 天使の記憶

駅前の歩道で省吾が私を抱きしめてきた。沢山の人が行き来しているし、会社の近くだから会社の人も見ているかもしれない。

それでも、省吾は抱擁を解かなかった。

「帰ろう」

抱き止められた身体が昨夜省吾に抱かれた熱を思い出させて独りでに震える。

私はおかしいのだろうか?淫らなのだろうか?

壱くんを想いながらも省吾からも離れられない。またも拒むことができずに頷いた。

「うん」



省吾の家へ行くと、今まで見たことがなかったものがリビングのテーブルに置かれていて、それが目を引いた。

「これなに?アルバム?」

「ああ、うん、琴莉に見せようと思ってた」

見ていいよ、省吾に言われて手を洗ってからそれを開く。

一枚目に省吾によく似た綺麗な女性が赤ちゃんを抱いている写真があった。これがお母さんなのだろう。

「綺麗なお母さんね」

「んー、綺麗かな?どうだろモテる人みたいだったけどね。ただ、7年前に亡くなってるから若いままのイメージで綺麗とも言えるかな」

「そ、そうだったんだ。ごめんなさい」

「話してなかったし、いいよ」

このマンションを親の持ち物だと言っていたから、てっきりご両親は元気なのかと勝手に思っていた。

そして、捲っても捲ってもお父さんの顔が真っ黒に塗りつぶされていてギョッとする。

何となく触れられずにいると省吾から話し出した。

「オレに父親はいないんだ。それはただの種馬だよ」

「それは……」

憎しみを顕にした声に戸惑ってしまう。お母さんは未婚の母だったと言うことか?

「本妻に子どもがいてそっちはオレのことも母さんのことも知らない」

「そう……」

「おかしいだろ?」

「ううん、可笑しくない。省吾のせいじゃないし」

私自身は仲の良い両親に育てられてきたけれど、壱くんだって生い立ちは複雑で。

それも本人が望んだわけではないのだから、省吾だって同じだ。

見ていると、小さい頃の省吾の写真は笑顔のものがない。

とても可愛らしい顔をしたいるのに、どこか暗い表情だ。苦労していたからなのだろうか。

「やっぱり琴莉だ……貴女は昔からそう、優しいし心が綺麗だ」

「心なんて真っ黒だよ」

今だって省吾を騙し続けているのに、そこまで考えてよく発言を振り返る。

「え?昔?私は省吾の昔を知らないよ?」

アルバムを見ても接点は見つからない。
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