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哀色夜伽草紙
第11章 天使の記憶
仕事はそれから数日間、どこか集中出来なかった。社会人として何とかこなしたけれどそれでも想うのは壱くんのことばかり。

省吾といても、何処にいるの?元気にしてるの?と、自分で離れたくせに気になって仕方ない。

壱くんが気になって街を歩けば似た背格好の人を見てしまう。

雑誌やWebに書いたコラムは出てくるから、生きているのだろうけれど、スマートフォンも繋がらない、メッセージも既読にならない、姿も見えない……不安であまりご飯を食べることも出来なくなっていた。


その日も定時も過ぎた頃、省吾の家に行く週末だったけれど、まっすぐ帰る気にもなれず、取り敢えず本屋にでも寄ろうかと思って歩いていると省吾が後ろから追いかけてきた。

「琴莉お疲れ様、どこ行くの?そんなフラフラして」

「フラフラしてないよ?大丈夫。本屋にでも行こうかなって」

歩きだそうとしたら、省吾が後ろから手を握ってきた。

「こんなに痩せて……今日はオレの家来る予定だろ?栄養つけさせなきゃって思ってるのに」

「大丈夫よ、毎日省吾が食べさせてくれてるし」

「まだ足りないよ」

省吾は私を心配してくれている。不安そうに瞳を揺らす様子からもそれはわかるけれど、今日は一人になりたい。

「今日は一人になりたい」

「ヤダ」

「お願い、一人にして?」

省吾の部屋に行ったら抱かれて、また色々と曖昧になってしまうだろう。

そう考えていたのに省吾は誤解していたようで

「アイツの所へ行くの?」

私に聞く口調がきつくなっている。

「違う、行かない。ただ……一人で考えたいの」

壱くんの事が忘れられない。

けれど省吾の事も大切だと思い始めてしまって、どうしていいかわからなくなっていた。

「じゃあウチで一人になればいい、隣の部屋でいいから」

ぎゅっと手を握られ、切ない声で言われると悲しくて
つい絆されそうになる。

「省吾……」

名前を呼ぶといつものようにうれしそうに目を細める。

「琴莉、離れないで」
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