この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
哀色夜伽草紙
第11章 天使の記憶

ふと声が聞こえた。
真っ暗な視界がぼんやりと開けて見えたものは、まるで古いフィルムの映画のようにぱちぱちと爆ぜながら淡い色で観えた。
「誰にも言わないで?ナイショだよ?琴莉ちゃん」
(琴莉ちゃん?)
「誰にも言わないで、ボクは……」
耳許に吐息を感じて、私が手を伸ばすと沈んだ意識がゆっくりと覚醒していく、壱くんの声に導かれて、浮上していく
ううん、これは壱くんの声では……ない?
「琴莉、琴莉、起きて、時間だよ……仕事遅れるよ?」
パチパチと瞬きをすると顔のすぐ傍に省吾の綺麗な顔
があった。
「わっ!え?…朝…」
「ん、朝だよ……寝顔可愛いから見てたいけどなぁ。ほら、時間ですよ」
見れば確かに支度をしなければならない時間だった。昨夜、二人は取り憑かれたように身体を繋ぎあって、私は啼き続けたせいか、喉が痛かった。
「ありがと」
起きて顔を洗って急いで支度をするとその間に省吾はサンドウィッチを作ってくれていた。それをこちらにみせてから
「会社で食べる?今食べちゃうか?」
なんて笑ってる。
その澄んだ瞳の屈託の無い笑顔を見て、胸が苦しくなる。
「なんで……省吾はそんなに私に優しいの?」
どうしてこんなに私に優しいの?
私はあなたに何も出来ていない、昨日だって勝手に飛び出したりして、まだ壱くんが忘れられないのに……
どうしてこの人を利用してしまったのだろう。申し訳なくて、どうして良いか分からずに視線を合わせれば、省吾が手を伸ばしてきた。
「そんなの簡単だ。好きだからだよ……だから大事にしたいんだ」
長い指が私の頬に届き、温かい指に涙が吸われていく
「琴莉?どした?」
「何でもない…」
気付かないうちに視界が滲み、涙が流れていた。
私はこの優しい人の手をどうしたいのだろうか
このまま傍に居て良いのだろうか
真っ暗な視界がぼんやりと開けて見えたものは、まるで古いフィルムの映画のようにぱちぱちと爆ぜながら淡い色で観えた。
「誰にも言わないで?ナイショだよ?琴莉ちゃん」
(琴莉ちゃん?)
「誰にも言わないで、ボクは……」
耳許に吐息を感じて、私が手を伸ばすと沈んだ意識がゆっくりと覚醒していく、壱くんの声に導かれて、浮上していく
ううん、これは壱くんの声では……ない?
「琴莉、琴莉、起きて、時間だよ……仕事遅れるよ?」
パチパチと瞬きをすると顔のすぐ傍に省吾の綺麗な顔
があった。
「わっ!え?…朝…」
「ん、朝だよ……寝顔可愛いから見てたいけどなぁ。ほら、時間ですよ」
見れば確かに支度をしなければならない時間だった。昨夜、二人は取り憑かれたように身体を繋ぎあって、私は啼き続けたせいか、喉が痛かった。
「ありがと」
起きて顔を洗って急いで支度をするとその間に省吾はサンドウィッチを作ってくれていた。それをこちらにみせてから
「会社で食べる?今食べちゃうか?」
なんて笑ってる。
その澄んだ瞳の屈託の無い笑顔を見て、胸が苦しくなる。
「なんで……省吾はそんなに私に優しいの?」
どうしてこんなに私に優しいの?
私はあなたに何も出来ていない、昨日だって勝手に飛び出したりして、まだ壱くんが忘れられないのに……
どうしてこの人を利用してしまったのだろう。申し訳なくて、どうして良いか分からずに視線を合わせれば、省吾が手を伸ばしてきた。
「そんなの簡単だ。好きだからだよ……だから大事にしたいんだ」
長い指が私の頬に届き、温かい指に涙が吸われていく
「琴莉?どした?」
「何でもない…」
気付かないうちに視界が滲み、涙が流れていた。
私はこの優しい人の手をどうしたいのだろうか
このまま傍に居て良いのだろうか

