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哀色夜伽草紙
第9章 残酷な私

「違う……海月がキレイだったから」
目を逸らして横を向いて答えるとグイッと顔をまた向けられて見つめ合うようにしてから……鼻と鼻を近づけてきた。
「海月より琴莉の方が綺麗だ」
琴莉と、呼び捨てにされただけでいつもとの違いにドキッとした。
「嘘ばっかり」
「オレの目には琴莉昔、初めて会った時から世界一綺麗なんだ」
「と、歳上をからかわないで」
羽田くんは目を優しく細めてくふくふと笑いながらこちらを見た。
「からかってないから、本気だし、琴莉は綺麗で可愛い。昔から変わってない」
(昔から?)
「私を前から知ってたの?」
面識があったの?分からない。
「知ってましたよ、ずっと前から。初めて会った時から貴女が欲しかった」
柔らかな瞳にまたドキリとする程透き通った色気を纏う。
羽で触れるように優しく、羽田くんが指に触れてきた。
長くて節張った指の感触に、壱くんと離れて抑え込んだ欲望を、煽られた気がした。
「本気で琴莉が好きなんだ」
そのまま顔が近づいて、近すぎるその距離に慄き後退ったけれど、そのまま抱き寄せめられて唇が重なった。
「んぁ……」
クチュクチュと音を立てながら私の唇の中で舌を動かして翻弄する羽田くんのキスに、腰の力が入らなくなった。
それと同時に溺れる前に、ここが水族館の誰からも見える場所だと言うことを思い出して彼を押し返す。
そして誰も目に入らない程の羽田くんの想いに少し怖くなる。
「ここだめ……」
必死でそう言った頃、周りを見ると誰も居なかった。
(よかった)
「周り見てますよ、オレだって」
唇を離して腰から手を離すと、後ろから人が来て、そのタイミングの良さに羽田くんが笑っていた。

