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哀色夜伽草紙
第9章 残酷な私

その後会社では特に何も変わらなかった。
若干、私に対して笑顔を見せることが多くなったかなと言う程度だったが、その分仕事が終わると手を繋いできたり、路上でキスをしてきたり、私を好きだという気持ちを隠さず外に出すようになった。
やめてと言っても聞かず、井坂課長などはそれを見て苦笑いしていて
「羽田に懐かれてるなぁ琴莉」
なんて言われてしまう始末だ。
そして週末、約束通り待ち合わせをして車で1時間ほどの場所にある水族館に来た。
明るい小さな水槽のコーナーを抜け、暗い水槽では暗闇の中にふわふわと、ぽかりと浮かぶ月のような青白い光を放っていたものに出会う。
「うわぁ」
ゆったりと青い水槽を揺蕩う白い生物に目が奪われる。
ふわりとゆらりと……現実の中より夢の中のようなゆったりとした動きに思わず声が出た。すると
「お月さんみたいだ」
羽田くんの柔らかな言葉が青い光に反射した。
「うん、お月様みたい」
まるで寂しい夜に星に囲まれて昇る月みたいだ。
吸い寄せられるように眺めて、水槽を見上げていると、腰を抱き寄せられた。
長い指がウエストに回るとその触れ方に背中が仰け反る。
「んぁ……」
「ナニこんなトコでそんな声出してんの琴莉さん……」
「だって……」
同じ位の背丈だから息がかかる近さで顔が合う。
青白い光に羽田くんの澄んだ目が潤んで、唇が仄かな欲を覗かせ艶めいて見えて心臓が煩くなった。
「欲しいの?」
「え?」
何を?と聞き直そうとすると、唇が僅かに触れた。
「な……」
「シテ欲しそうだったから」
ふふふと、いたずらっぽく笑う羽田くんの色気にクラリとした。
一体普段は何処に隠しているのだろうその色気。
若干、私に対して笑顔を見せることが多くなったかなと言う程度だったが、その分仕事が終わると手を繋いできたり、路上でキスをしてきたり、私を好きだという気持ちを隠さず外に出すようになった。
やめてと言っても聞かず、井坂課長などはそれを見て苦笑いしていて
「羽田に懐かれてるなぁ琴莉」
なんて言われてしまう始末だ。
そして週末、約束通り待ち合わせをして車で1時間ほどの場所にある水族館に来た。
明るい小さな水槽のコーナーを抜け、暗い水槽では暗闇の中にふわふわと、ぽかりと浮かぶ月のような青白い光を放っていたものに出会う。
「うわぁ」
ゆったりと青い水槽を揺蕩う白い生物に目が奪われる。
ふわりとゆらりと……現実の中より夢の中のようなゆったりとした動きに思わず声が出た。すると
「お月さんみたいだ」
羽田くんの柔らかな言葉が青い光に反射した。
「うん、お月様みたい」
まるで寂しい夜に星に囲まれて昇る月みたいだ。
吸い寄せられるように眺めて、水槽を見上げていると、腰を抱き寄せられた。
長い指がウエストに回るとその触れ方に背中が仰け反る。
「んぁ……」
「ナニこんなトコでそんな声出してんの琴莉さん……」
「だって……」
同じ位の背丈だから息がかかる近さで顔が合う。
青白い光に羽田くんの澄んだ目が潤んで、唇が仄かな欲を覗かせ艶めいて見えて心臓が煩くなった。
「欲しいの?」
「え?」
何を?と聞き直そうとすると、唇が僅かに触れた。
「な……」
「シテ欲しそうだったから」
ふふふと、いたずらっぽく笑う羽田くんの色気にクラリとした。
一体普段は何処に隠しているのだろうその色気。

