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哀色夜伽草紙
第9章 残酷な私
壱くんは抵抗せずに扉の外に出て、フラフラとエレベーターを使って帰って行った。

それをそっと見送ると、急に何だかあっさりと帰ったな……なんて、自分でした事なのに虚しくて、哀しくなった。

きっともうこの関係は限界だったのだろう。

壱くんはこれから元山さんと上手く行けばいい。

美人だし私以外には優しそうだったし、仕事も出来るみたいだったから会社の経営者のお嫁さんとしては申し分無いだろう。

溜め息を落としそうになって、慌てて飲み込む。

憂いたって仕方ない。独りでやっていけるようにしよう。

そう、独りで生きていかなきゃ。

一応明日羽田くんには嘘をついて……暫く演技しようか?壱くんの事だから裏を取りに行くかもしれないし……

それは残酷だろうか?

いや、壱くんを守るためだ。それなら誰に嫌われても私は出来る。


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