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哀色夜伽草紙
第9章 残酷な私
着替えもあるし、と言い訳しながら気乗りしなかったが自宅に帰ってきた。
壱くんから連絡が来るだろうとは思っていたけれど、そのまま逃げ続けることは出来ないだろう。

自宅に着くと、すぐにインターフォンが鳴った。

「壱くん……」

連絡より先に来てしまったか……揺るがずに拒否することが出来るだろうか?いや、やるしかないのだ。

「はい、開けたよ」

オートロックと部屋の鍵を解除しておくと暫くしてから部屋の扉が開いた。

「琴莉?」

「こんばんは壱くん」

私は玄関で立ったまま答えた。いつものように抱きついたりなんてしない。

「昨日実家に居たの?」

「うん、具合が良くなくてついててもらったの」

極めて事務的に告げると壱くんが近付いて手を伸ばしてきたからそこから身を捩る。

「琴莉?」

「ねぇ壱くん……私、羽田くんと付き合うことにしたの」

「……は?」

嘘くさいだろうか?
けれど、これしか彼に言える理由が見つからない。
壱くんは誰よりも私のことを知っているから……

「冗談は今聞きたくない」

壱くんは予想通り取り合わない。だけど、ここで引き返すわけにはいかない。

壱くんの立場を守らなければ。わかっていたことだ、私が壱くんの姪だと分かった時から……

「冗談じゃないの、壱くんが言うとおり。私、もうイヤなの……普通に結婚したい、『お母さん』になりたいの」

そんな事思ってもいないのに、けれどこれが考え抜いた末に思いついた、二人の関係を切り裂く鋭い刃だった。

「それは……」

ほら、これ以上貴方は言えない。
貴方と私は子どもを作ることは出来ない事を知っているから

「羽田くんは私を大事にしてくれるし、何よりも相性もよかったの。抱かれて幸せだった」

「じゃあなんで出張から帰ってきた時は嘘ついたんだ?」

「貴方をすぐに捨てるなんて可哀相だったからよ、最後にって思っただけ」

努めて事務的に淡々と話す。
本当は泣きたかったけれど、壱くんの事を思えばそれを止めることができた。

話す毎に頭が冷静になっていく。

「琴莉?」

「今までありがとう、サヨナラしよ壱くん」

呆然とする壱くんの身体を回転させ扉の外に押し出した。


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