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哀色夜伽草紙
第1章 初めてのヒト

あの日から壱くんは私をかなり過保護に扱うようになった。
「付き合って」なんて台詞は言われた事はないけれど、あの時から彼氏になった……そういう認識で良いのだと思う。
それからは学校の送りや迎えも何度も来たし、私の高校時代はお互いのアルバイト以外は休日もほぼ一緒に過ごしてきた。
いつでも優しくそばにいて、親の目を盗んではキスをした。
そして私が大学生になった時、壱くんが初めて私を抱いた。
あの日は桜がまだ残っていた春先で、大学4年になった壱くんは既に働いていて、若者向けのレジャー情報発信の会社を立ち上げたり、コラムニストとして活動を始めていた。
「同じキャンパスで通いたかったなぁ」
4月頭の休日、壱くんの部屋で過ごしている時にそんな風に言っていた。
本音を言えば私だって壱くんと同じ学校に入りたいと思っていたけれど、その大学には希望の学部もなかったので、近くの女子大に進学を決めたのだ。
「うん。でも行きたい学部なかったんだもん」
「分かってる、そうだね。琴莉のやりたい事をやればいい。オレはずっと琴莉を応援してるよ」
壱くんはいつもそうやって笑ってくれていた。
流れる雰囲気が何となく色めいて、キスを交わすけれど、その頃の二人はまだ身体を繋いだことがなかったのだ。
そろそろ大人になりたいとも願っていたけれど、進めないでいたそんな頃だった。
「なぁ琴莉……琴莉はオレが好き?」
急にそんな事を言われてドキッとしてしまう。
「……うん、好きだよ」
恥ずかしくて小さい声になってしまったけれど、その気持ちは昔から変わらない。
「オレも琴莉が好き、大事にするって決めてたからシテなかったけどさ……」
「うん」
いつもと違う掠れた声にドクンと身体が大きく跳ねた。
指が、壱くんの骨ばった指が私の髪に触れて発火したように身体が熱くなったその時
「抱きたい……」
そのまま指が頬を撫でてきて、苦しい程に心臓が早鐘を打つ。
いよいよ愛してもらえて、大人になれるかもしれない、そんな期待と不安で声が出にくくなっていた。
けれど詰まる喉の奥から声を振り絞ると小さな囁きが漏れて出た。
「いいよ」
私の声ではじまって、壱くんが唇を押し付けてきた。
「付き合って」なんて台詞は言われた事はないけれど、あの時から彼氏になった……そういう認識で良いのだと思う。
それからは学校の送りや迎えも何度も来たし、私の高校時代はお互いのアルバイト以外は休日もほぼ一緒に過ごしてきた。
いつでも優しくそばにいて、親の目を盗んではキスをした。
そして私が大学生になった時、壱くんが初めて私を抱いた。
あの日は桜がまだ残っていた春先で、大学4年になった壱くんは既に働いていて、若者向けのレジャー情報発信の会社を立ち上げたり、コラムニストとして活動を始めていた。
「同じキャンパスで通いたかったなぁ」
4月頭の休日、壱くんの部屋で過ごしている時にそんな風に言っていた。
本音を言えば私だって壱くんと同じ学校に入りたいと思っていたけれど、その大学には希望の学部もなかったので、近くの女子大に進学を決めたのだ。
「うん。でも行きたい学部なかったんだもん」
「分かってる、そうだね。琴莉のやりたい事をやればいい。オレはずっと琴莉を応援してるよ」
壱くんはいつもそうやって笑ってくれていた。
流れる雰囲気が何となく色めいて、キスを交わすけれど、その頃の二人はまだ身体を繋いだことがなかったのだ。
そろそろ大人になりたいとも願っていたけれど、進めないでいたそんな頃だった。
「なぁ琴莉……琴莉はオレが好き?」
急にそんな事を言われてドキッとしてしまう。
「……うん、好きだよ」
恥ずかしくて小さい声になってしまったけれど、その気持ちは昔から変わらない。
「オレも琴莉が好き、大事にするって決めてたからシテなかったけどさ……」
「うん」
いつもと違う掠れた声にドクンと身体が大きく跳ねた。
指が、壱くんの骨ばった指が私の髪に触れて発火したように身体が熱くなったその時
「抱きたい……」
そのまま指が頬を撫でてきて、苦しい程に心臓が早鐘を打つ。
いよいよ愛してもらえて、大人になれるかもしれない、そんな期待と不安で声が出にくくなっていた。
けれど詰まる喉の奥から声を振り絞ると小さな囁きが漏れて出た。
「いいよ」
私の声ではじまって、壱くんが唇を押し付けてきた。

