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哀色夜伽草紙
第7章 幻と現実

続いてカシャンと扉を施錠する音が響いて電気が消された。
「何……え?羽田くん?」
空気が色を変えた。その空気の重さに身体が跳ねた。
「貴女がいけないんだ……」
オレンジの間接照明がぼんやりと入ってきた人を映し出す。優しい柔らかいはずの顔の輪郭がライトのせいか怖いくらいにシャープに見えた。
(まさか……誰もいないの?)
「課長は……?」
もうそれしか答えはないと思ったが、敢えて聞くと羽田くんが唇を片側だけ引き揚げて嘲るように笑った。
「ノコノコと誘いに乗って男の部屋まで入るなんて……貴女には警戒心がないのか」
低い声が呆れたように呟く。
井坂課長が居るからという羽田くんの言葉にすっかり騙されてシャワーの音がしていたからって、確認もせずに入室したのは確かだが、それはあんまりではないか。
「そんな……」
「貴女にとってオレは何?」
「何って……」
会社の後輩以外に特別な関係などない。
それでも、どこかで気づいていたのではないか?
あの探るような舐めるような視線は、ただの会社の後輩でないことを……
揺らめくオレンジ色の光の中、近づく静かな足音に恐怖を煽られ、身体が自然に震える。
後退り、窓際に立つ私を羽田くんが捕獲するように抱き締めたので恐怖にか、歯がカタカタと鳴るのが聞こえた
「……琴莉がここに来るのを選んだんだよ?」
いつもの柔らかいの彼の声ではなく、掠れたようで喉の奥から欲望が相俟って押し出された艶やかな声が私をそこへ縫い止めた。
「違……」
「貴女はオレを求めてる」
違う、私は貴方を求めてない……筈だ。
(壱くん、助けて……)
そう思った時に耳許を吐息が掠めた。
すると、身体から力が抜けていくのを感じた。
酔ったわけではないだろうに、まるでアルコールが回ったように身体が熱く、力が入らなかった。
「おいで、天国を見せてあげるから」
誘う彼の声が地獄の始まりか。
力が入らずに動けずにそのまま震えている身体を窓に押し付けられた。
「何……え?羽田くん?」
空気が色を変えた。その空気の重さに身体が跳ねた。
「貴女がいけないんだ……」
オレンジの間接照明がぼんやりと入ってきた人を映し出す。優しい柔らかいはずの顔の輪郭がライトのせいか怖いくらいにシャープに見えた。
(まさか……誰もいないの?)
「課長は……?」
もうそれしか答えはないと思ったが、敢えて聞くと羽田くんが唇を片側だけ引き揚げて嘲るように笑った。
「ノコノコと誘いに乗って男の部屋まで入るなんて……貴女には警戒心がないのか」
低い声が呆れたように呟く。
井坂課長が居るからという羽田くんの言葉にすっかり騙されてシャワーの音がしていたからって、確認もせずに入室したのは確かだが、それはあんまりではないか。
「そんな……」
「貴女にとってオレは何?」
「何って……」
会社の後輩以外に特別な関係などない。
それでも、どこかで気づいていたのではないか?
あの探るような舐めるような視線は、ただの会社の後輩でないことを……
揺らめくオレンジ色の光の中、近づく静かな足音に恐怖を煽られ、身体が自然に震える。
後退り、窓際に立つ私を羽田くんが捕獲するように抱き締めたので恐怖にか、歯がカタカタと鳴るのが聞こえた
「……琴莉がここに来るのを選んだんだよ?」
いつもの柔らかいの彼の声ではなく、掠れたようで喉の奥から欲望が相俟って押し出された艶やかな声が私をそこへ縫い止めた。
「違……」
「貴女はオレを求めてる」
違う、私は貴方を求めてない……筈だ。
(壱くん、助けて……)
そう思った時に耳許を吐息が掠めた。
すると、身体から力が抜けていくのを感じた。
酔ったわけではないだろうに、まるでアルコールが回ったように身体が熱く、力が入らなかった。
「おいで、天国を見せてあげるから」
誘う彼の声が地獄の始まりか。
力が入らずに動けずにそのまま震えている身体を窓に押し付けられた。

