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哀色夜伽草紙
第4章 2人のカンケイ

「ねぇ琴莉」

「なぁに壱くん」

昨夜から壱くんの家に泊まり、朝食を食べてすぐに二人で出かけようと準備して、寝室の鏡台の前で髪を梳いていると、壱くんが鏡越しに話しかけてきた。

「そろそろ、考えないか?」


その真剣な眼差しで何を言わんとしているのか分かったが、はぐらかす。

「何を?私、ダイエットした方がいいかな?最近この辺の肉が付いてきた気がするし」

お腹周りを触ってみたが、わざとらしかっただろうか。

「ダイエットの必要はないよ、このままの琴莉がいい。痩せ過ぎなくらいだろ」

壱くんも分かっていてノッてきて笑うけれど、けれどこの話をはぐらかすつもりはないと伝えるように私の肩に手を置いてきた。

立てられた人差し指が首筋をなぞり、腕へ下りて左手を取られ、ゆっくりとそのまま左手の薬指に触れた。

「…ん」

その艶めかしい触れ方に痺れが走る。いつだって壱くんは私の欲に簡単に火を灯す。

「オレと一緒に……生きて?琴莉」

「でも……」

私だって貴方と居たい。けれど、それは駄目なのだ。いつかは手放さなければならない想いだと、分かってる。

けれど心の奥でそれを認められないから苦しいのだ。

貴方と私は許されない関係だから

「また余計な事を考えてるね琴莉」

「だって……」

あなたはいつか私を捨てる。二人だけの世界に生きるわけにはいかないのだから、近い将来そんな日が来る。

貴方が他の人と幸せになる姿なんて想像しただけで嫉妬で狂う。

手放さなくてはとわかっていても、もしもそんな日が来たら私は……

「死んでしまうわ」

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