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哀色夜伽草紙
第3章 新しい人
程なくして戻ってきた井坂課長が首を捻る。

「何かあったか?」

私の表情が強ばっていたのを感じたのかもしれない。

「いえ何も。課長、申し訳ありません、私お先に失礼させて頂きます」


このまま羽田くんと一緒に居たくなくて、立ち上がり財布から五円札を一枚を抜き取って渡したが、そのまま課長に返された。


「会計は気にすんな。それに迎えに来るんだろ壱が。迂闊にここで琴莉を1人にしてアイツに恨まれたら大変だからな、来るまで待ってろよ」


「えっと、ありがとうございます、ご馳走様です。はい、車で来るそうです」


「じゃあ尚更だ。店の前についたらスマホ鳴らせと返しとけよ」

井坂課長は淡々と言って私の肩を軽く叩いて座らせた。

その様子を見ていた羽田くんがビールを飲みながら言った。

「随分井坂課長は笹木さんに甘いんですね」


「そうか?昔から知ってるからかな、妹みたいな存在だからつい世話焼いちまう」

井坂課長は目を細める。

確かに壱くんに頼まれているとは言え、井坂課長は私に過保護気味だ。

仕事は厳しいけれど、あれこれと気にしてくれる。

「大事な後輩の大事な人だからな」

「へぇ」

羽田くんはそれ以上は何も言わずにまた無表情に戻ってビールを煽った。




暫くして、壱くんからのメッセージがきて、着いたので中まで来るようだった。

店の中に入ってきて井坂課長に挨拶をする

「井坂先輩、有り難う。……琴莉、さぁ帰ろう」

優しい声で囁き私の手を握ると、井坂課長に声を掛けて羽田くんに頭を下げた

「琴莉がお世話になりました」

「いえ。オレの方が今、笹木さんに指導して頂いててお世話になってます」


「うちの子が迷惑をかけてないかな?」


壱くんがビジネスライクな完璧な笑顔を羽田くんに向けている。


「いえ、良い先輩で助かっています」

羽田くんも人好きのする柔らかな笑顔で応対する。

だけど、笑顔で会話しているのになぜ?こんなにも冷たい空気なのだろう。


「これからも、仕事ではよろしくね」


「はい」


「行こう、琴莉」


何故か含み笑いをしている羽田くんとニコニコした井坂課長に頭を下げて二人でお店を出た。



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