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哀色夜伽草紙
第3章 新しい人
お店の近くのパーキングに停めてあった壱くんの車の助手席に乗ると、シートベルトをする間に壱くんが私に抱きついてきた。


「んっ…」

やや強引に腕を引いてから、唇を押し当てられた。

「ん……レモンサワーの味がする」

そう言いながら右手で後頭部をしっかり押さえて、舌を唇に割り入れて来る

「…ぁ……ん…」


舌で歯列を娜ぶるように嘗めあげられ、私も壱くんの舌を追いかける。


深まるキスの間に、左手の指が首筋をたどり鎖骨に到達すると唇から離れた口が、鎖骨にチリリと痛みと赤い華を散らす。

「っ……」

「琴莉大好きだよ」

「ん…私も壱くんが大好きよ?来てくれてありがとう」

「うん……早く会いたくて」

壱くんはそう言いながらキスをやめない。

深まるキスにそのまま二人とも身体の熱が収まらなくて、急いで家を目指す

「早く、早く…琴莉が欲しい…」

壱くんが言うから私も小さく答えた。

「私、も……」

「イヤらしいなぁ」

そんな風に言わないで。貴方がそんな風に私を育てたのよ?

どうしよう。家を継ぐ貴方と私は結ばれてはいけないのに、このまま貴方なしでは生きていけなくなってしまったら……

「バカ……」

不安もある。だけど、壱くんが嬉しそうに笑ったから

私はホッとして、長い息を吐き出した。
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