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哀色夜伽草紙
第3章 新しい人
「へー、羽田って何者?」

井坂課長が私の隣で素っ頓狂な声をあげた。

「何者でも無いですよ、フフフ。ちょっと手先が器用なだけです」

なにかと思えば、羽田くんの前には一枚の箸袋で見事に鶴が2羽列なって折られていた。
確かにあんな細い紙で綺麗に鶴をしかも繋がった状態で折るなんて……器用だ。

「オレ無理、絵も下手だし細かい作業苦手だな。図面は引けるんだけどなぁ」

「あー、確かに課長の絵は独特でしたよね?」

以前戯れにボツ書類の横に書いてあった得体のしれない動物の絵が妙にインパクトがあったので聞いたら真顔で

「は?あれは立派なうさぎだ」

と、言われたがあれはどうみても……ウサギではなかった。


「笹木さんは字もイラストも上手でしたよね。さっき紙で場所や部品の説明してくれた時の絵の線に迷いがない感じだった」

よく見てる、そう思った。

「有難う。そうだね……絵は趣味で描いてるからかなぁ」

「イラストレーターになりたい時期もあったんだろ?大学はそっちの学科も出てるし。彼氏がコラムニストなんだから組めばいいのに」

出された枝豆をつまみながら井坂課長がサラリと言うのでドキリとする。

それはまさに壱くんが望んだ私の仕事だったのだ。

でも私は外の世界で働いて、いつ独りになってもいいようになりたかったのだ。

「あんな売れっ子に無名のイラストレーターなんてつけませんよ。ははは……」

グラスを誤魔化すように持ち上げて喉に流し込む。

あまりお酒に強い方ではないから、飲み過ぎないようにレモンサワーをグラスで飲んでいたのだが

先程からチラチラと前に座る羽田くんからの視線を感じて居心地が悪い。

「ちょっと、お手洗い行ってくるな」

しかも井坂課長が席を立つとスッと長く節張った指がテーブルの上の私の手に触れてきた。


その艶かしい……いえ、いっそ厭らしい触れ方に身体がゾクリと背中に痺れが走って慌てて手を引っ込める。

「琴莉さん、彼氏の話を振られるとなんでそんなに哀しそうなんですか?」

綺麗な硝子玉の瞳が今度ははっきりと私に強い欲を纏った視線を送り付けてきた。どういう事なの?
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