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哀色夜伽草紙
第3章 新しい人

二人で有難うを言い合って何だか照れくさくなっていると、様子を見ていたらしい井坂課長が近づいて来て羽田くんを褒めた。
「お!羽田は中々理解が早いみたいだな、これなら独り立ちも早そうだ」
「笹木さんの教え方が上手いからですよ」
すると羽田くんは今度ははにかむような表情を見せる。
細いけれど頬に丸みを帯びた可愛い顔立ちの彼はそうすると途端に柔らかい雰囲気を纏う。
その柔和な雰囲気は、まるで春の日射しのようだと感じた。
優秀で少し寡黙だが柔らかい雰囲気はきっと仕事の仲間としてはやりやすいかもしれない。
などと、ぼんやりそう考えていると何やら視線を感じて見遣れば……
羽田くんの硝子玉の様に澄んだ丸い目が暗い光を湛え、じっとこちらを見ていることに気づいて慌てて目を逸らす。
その目は先程までの明るさとは正反対の暗い目だったら。
ビックリするほどその暗い光は、まるで先の見えないトンネルのようだ。
もしくは、ぽっかりと空いた暗い夜闇のようだった。
(怖い……)
この闇に絡めとられてしまうのではないか?
そんな底知れぬ恐怖が脚元から這い上がるのは気のせいだろうか?
でもそれは気のせいだったのか、もう一度彼を見ると、垂れ目気味の丸い目が笑顔で笑っていた。
「笹木さん、聞いてました?」
「え?ごめん、なに?」
どうやら話しかけられていたようだ。
一体さっきの暗さは何だったのだろう?
幻……?
「お!羽田は中々理解が早いみたいだな、これなら独り立ちも早そうだ」
「笹木さんの教え方が上手いからですよ」
すると羽田くんは今度ははにかむような表情を見せる。
細いけれど頬に丸みを帯びた可愛い顔立ちの彼はそうすると途端に柔らかい雰囲気を纏う。
その柔和な雰囲気は、まるで春の日射しのようだと感じた。
優秀で少し寡黙だが柔らかい雰囲気はきっと仕事の仲間としてはやりやすいかもしれない。
などと、ぼんやりそう考えていると何やら視線を感じて見遣れば……
羽田くんの硝子玉の様に澄んだ丸い目が暗い光を湛え、じっとこちらを見ていることに気づいて慌てて目を逸らす。
その目は先程までの明るさとは正反対の暗い目だったら。
ビックリするほどその暗い光は、まるで先の見えないトンネルのようだ。
もしくは、ぽっかりと空いた暗い夜闇のようだった。
(怖い……)
この闇に絡めとられてしまうのではないか?
そんな底知れぬ恐怖が脚元から這い上がるのは気のせいだろうか?
でもそれは気のせいだったのか、もう一度彼を見ると、垂れ目気味の丸い目が笑顔で笑っていた。
「笹木さん、聞いてました?」
「え?ごめん、なに?」
どうやら話しかけられていたようだ。
一体さっきの暗さは何だったのだろう?
幻……?

