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わたしの肢体
第2章 秋芳 善(15)
あれは、中学に入ってすぐのことだっただろうか・・・。
考えながら、善はかつて父親と走っていた河原のほうへ足を進めていた。
―――お前と俺は、血が繋がってない。お前のおとーさんは、俺じゃない。
現役時代3番プロップだった父親は、駆け引きが苦手だ。
いつだって正直だし、嘘をつけない。
父親に告白される前から、善はとっくに気がついていた。
だって、まるで容姿が父親に似ていないどころか、日本人とも少し違うのだ。
気が強いからいじめの対象にこそならなかったものの、面と向かって「善ってさ、外国人なの?」とクラスメイトに尋ねられることだってあった。
だから善にとって父親の告白は、衝撃を受けたとはいえ、心にしっくりくるものがあった。
「じゃあ、俺のほんとのお父さんは、どこでなにしてるの」
善は尋ねた。
本当はもっと聞きたいことがあった。
けれど、幼い胸中に色んな感情が混在して、それしか聞けなかったのだ。
父親は淡々と答えた。
「今は県外で暮らしてる。結婚してるし、子供もいる」
善は心の中で(子供がいるってことは、俺には言と百のほかに、兄弟がいるってことか)と、複雑な気持ちで呟いた。
それから、父親に更に尋ねた。
「なんでその人は俺を育ててないの」
善にとっては当然の疑問だった。
自分の他に子供がいるのに、どうして自分だけ育ててもらっていないのか・・・。
幼い善は当然納得がいかなかった。
父親は押し黙り、しばらく黙っていた。
父親の筋髭から汗が伝って落ちるのが、街灯に照らされて見えた。
「俺が、お前のかーちゃんをとっちまったからかなぁ」
父親は黙り込んだ割には、案外あっけらかんと答えた。
河原をぐるりと回るランニングコースを折り返し、復路をとぼとぼ歩いている最中のことだった。
考えながら、善はかつて父親と走っていた河原のほうへ足を進めていた。
―――お前と俺は、血が繋がってない。お前のおとーさんは、俺じゃない。
現役時代3番プロップだった父親は、駆け引きが苦手だ。
いつだって正直だし、嘘をつけない。
父親に告白される前から、善はとっくに気がついていた。
だって、まるで容姿が父親に似ていないどころか、日本人とも少し違うのだ。
気が強いからいじめの対象にこそならなかったものの、面と向かって「善ってさ、外国人なの?」とクラスメイトに尋ねられることだってあった。
だから善にとって父親の告白は、衝撃を受けたとはいえ、心にしっくりくるものがあった。
「じゃあ、俺のほんとのお父さんは、どこでなにしてるの」
善は尋ねた。
本当はもっと聞きたいことがあった。
けれど、幼い胸中に色んな感情が混在して、それしか聞けなかったのだ。
父親は淡々と答えた。
「今は県外で暮らしてる。結婚してるし、子供もいる」
善は心の中で(子供がいるってことは、俺には言と百のほかに、兄弟がいるってことか)と、複雑な気持ちで呟いた。
それから、父親に更に尋ねた。
「なんでその人は俺を育ててないの」
善にとっては当然の疑問だった。
自分の他に子供がいるのに、どうして自分だけ育ててもらっていないのか・・・。
幼い善は当然納得がいかなかった。
父親は押し黙り、しばらく黙っていた。
父親の筋髭から汗が伝って落ちるのが、街灯に照らされて見えた。
「俺が、お前のかーちゃんをとっちまったからかなぁ」
父親は黙り込んだ割には、案外あっけらかんと答えた。
河原をぐるりと回るランニングコースを折り返し、復路をとぼとぼ歩いている最中のことだった。

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