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第1章 新本一花(13)

　へへへ・・・。
　湿った声で笑う男の脳の中を模写したような、畳の上に転がる妄想の破片。
　麻縄、炎を燃やす家庭用蝋燭、安っぽい鞭。
　SMの真似事。
　湿っぽい男女の汗と体液。
　そしてどろどろに溶けてゆく蝋燭の臭いが、台所にまでじわじわと流れてくる。

「ほら、サナエ、舌だせよ」

　暗闇のなか炎を燃やし続ける蝋燭のオレンジ色の明かりが、サナエと呼ばれた女の瞳をぞわりと輝かせた。
　恐怖が全身を支配しているのか、サナエは全身をくねらせながら男の身体の下で貧相な肢体を動かす。
　唇は横一文字にきつく閉じられたままだ。


「ほらぁ・・・はやくだせよぉ」


　暖色に照らし出された空間。
　自己発電気味の興奮に濡れた甘い声で急かす男の若いつやのある皮膚の下で、サナエのハリを失ったつやのない皮膚が蠢いている。
　唇は依然としてきつく閉じられたままだ。