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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章  『 シフォンケーキ 』


改札を出た人たちは、みな参道へ向かう。


老舗のサブレのお店から、焼きたてのパンの香りがした。
この間、初めてこの店で、パンが売られていることを知った。
四角いあんパンは、焼き目がこんがりしていてとてもおいしそうだった。

帰りに、明日のパンを買って帰ろうと思った。


参道は、賑やかだった。
平日も休日も、晴れの日も雨の日も、この参道には人がいる。


あげたての蒲鉾の香ばしい香りも、季節感のある柄を並べている手ぬぐい屋さんも、変わらずにここにある。

もちろん、この間はソフトクリームが売られていた店が消えしまって、今川焼の店になっていることもある。

でも、この町の雰囲気は、いつ訪れても変わることはなかった。


わたしは、箸ばかりを置いてある店の前で立ち止まった。

いつも横目で見ながら、とおりすぎてしまう店。

今日は、ちょっと見てみよう。

そう思って、店へと足を進める。

店先にはたくさんの箸が並べられている。
壁にも、無数の箸が飾られてあった。

持ち手がガラスのもの、漆の塗りの美しいもの、木目を生かして作られたもの……。

凝ったものの中に、折れたバットから作られたものや観光地らしくキャラクターの描かれたもの、名前が印字されたもの……限りなく箸があった。

わたしは、栗色の木目がまるで模様のようになっているような箸を手に取った。
しっくりこなかったので、そっと元の場所に戻した。

次に黒檀の箸を手に取った。

わたしの指先にくっつくように馴染んだ。

五味五色というけれど、黒い色というのはなかなかない。黒ごまにひじき……。海苔は黒のようだけど、よく見れば深い緑だ。
この黒檀の箸が、食卓を色鮮やかにしてくれればいいなあ。
白磁の皿にも映えるだろうなあ。
と、思った。

わたしは、黒檀の箸をそっと元に戻した。

他に、心惹かれる箸があるかもしれないと、数ある箸を見ながら、ゆっくりと店内を歩いた。
気になる箸を手にしても、黒檀ほどしっくりくる箸はなかった。

わたしは、黒檀の箸を置いてあるところに行き、二膳手にとって、レジに向かった。


じっくりと物を選ぶ、贅沢な時間を楽しんだ。



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