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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章  『 シフォンケーキ 』


電車は、わたしを目的地へ連れてきてくれた。

終点の駅。

進行方向、左側が降車側だ。
右側に目を向けると、扉が開くのを待ちわびている年配の女性たちが目に入ってきた。

楽しそうに話しているその姿は、女子校生のころころした笑顔と重なる。

観光地と呼ばれるところは、華やかだ。

神社やお寺などが並ぶ古都であっても、そこを訪れる人たちが明るい空気を纏っているからだろうか。

降車側の扉が開く。

まっさきに降りたのは、運転手の後ろの席に座っていたあの小さな男の子。

キラキラして笑顔を浮かべながら、両親を気にしながらちょこまかと歩く姿は、子犬のワルツだ。

私は、人波と同じ速度で歩いた。

この人たちは、目的があってここに来ているはずだ。

本殿に続く階段を振り返れば町がよく見渡せる神社を目指すのか、弁財天様をおまつりしている神社を目指すのか……。

わたしは、参道をブラブラしたら、お詣りもせずに帰る不届きものの予定。

路面電車から参道は迂回しなければならない。
でも、この駅は特別だった。
自動改札にある赤いボタンを押してから、カードをタッチすれば、JRの構内を通り抜けることができる。

いろんなところに出かけるほうだけれど、この駅の仕組みには驚いたし、観光客のことを考えていると感心した。

いつものように、ボタンを押し、JRの構内を抜けて参道側の出口から出た。

見慣れた景色ではあったけれど、やはりこの町は来る度にワクワクする。


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