この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章  『 シフォンケーキ 』


今日の海は……凪いでいた。

わたしが来るときは、たいてい、電車から見える樹木が大きく揺れていた。
風が強いことが、見てとれた。

だけど、今日は樹木は穏やかだった。
電車のガタゴト揺れる音しか聞こえないけれど、もしこの音がなければ、カサカサと葉っぱたちが擦れるが聞こえるだろうと思った。


海は、同じ色の時がない。


この間訪れた時は、鈍色の海原がずっと遠く水平線まで続いていた。
白波が高く上がっていて、これからどんどんと荒れていく予感がした。
何もかもを受けつけることはない……冷たさを感じた。
その冷たさは、心を明るい気分にはしなかったけれど、なぜか、心を落ち着かせた。
自然のありのままを感じたからだろう。

今日は、あの日の海とはまるで違う。

水面の青は、一色の青ではなかった。

青に紺碧、水色、天色、瑠璃色……降り注ぐ光の反射が様々な青色を作り出し、混じりあっていた。


目が離せない。


こんなに美しいものなのだろうか。

自分が現実に見ているのに、この景色は本物かと疑ってしまう。

空色には白い雲がぽつりぽつりと浮かんでいて、わたしの心を同じように清々しくさせる。

自然の美しさに圧倒した。
わたしは、自分の存在がとても小さなものに思えた。

たった数分、車窓から見えた景色は、わたしの心をつかまえた。

……やっぱり来てよかった。

この海が見れただけでも、来たかいがあったと思う。

瞬間、わたしの心は、からっぽだった。

柊真のことも、晩ごはんのことも、Sachiさんのことも、燃えないゴミの日のことも……なにもかもわたしの中から消えていた。


/67ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ