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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章 『 シフォンケーキ 』

洗濯を干しながら、青空に目を細めた。
絵筆に白の絵の具をたっぷりと含ませて、スカイブルーの色画用紙に、スーっと線をひいたような……そんな空。
家にばかりこもっめばかりではなく、
たまには、外に出よう!
お気に入りの紺のワンピースに白のショートカーディガンを羽織った。
家にいるだけの生活だから、普段は基礎化粧で終わってしまうけれど、外に行くとなるとそうはいかない。
ベージュ系のアイシャドウに、マスカラ、ほお紅も薄くさす。
なんだか口紅は塗りたくなくて、落ち着いたローズ系のグロスを塗った。
出かける準備はできた。
でも、どこに出かけよう……。
ふらりと海側に散歩にでかけようか。
海岸沿いを歩きながら、富士山でも見ようか。
山側を歩くなら、お寺や神社を訪れたい。
参道の両横には、てぬぐいの店やガラスの小物が並んでいる店、手焼きせんべいに焼きたての団子やさん、そういうお店にフラフラと立ち寄りながら、神社へ向かう。
そして、心穏やかに手を合わせるのもいい。
どちらにしようかと迷ったけれど、賑やかな参道に心惹かれていたわたしは、山側に行くことにした。
電車を乗り継いでいくのは、面倒だけど、二回目に乗る電車は、魅力的だ。
住宅の壁に触れられるほど接近する箇所がある。
危ないと思わせるけれど、レールの上を正しく走る電車はまっすぐと進んでいく。
車窓から見えるのは、壁。
美しい景色ではないけれど、珍しさに心躍る。
壁が近くて、ついつい、ぶつからないかな……と心配になってしまうのは、毎回のことだ。
そしてなにより、一番のお気に入りは、見晴らしのよい場所では、海が広がるのだ。
その景色は、1枚の絵のよう。
何度も見ても、同じ表情の時はない。
冬の早朝は、清々しさを感じる。
今日はなにかいいことがありそうだと思わせてくれる。
雨降る日は、濃い鼠色の雲が垂れ下がり、小さな白波がだんだんとうねりをあげ、海の荒々しさを感じる。
どんな表情であっても、自然の美しさを感じ、ありのままの……自分を感じ、力を与えてもらえる……。
ほんの一駅間という短さも、また見たいという気持ちにさせてくれるのだと思う。
目を閉じて、今日はどんな海が見れるのかと思うと心がはやる……。

