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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第2章 『 シフォンケーキ 』

あの夏のわたしは、なにかに取り憑かれていたのだと思う。
わたしは、自慰をすればするほど……、普通ではないのだと感じた。
少女まんがには、好きな男子と手が触れただけでドキドキする主人公が描かれている。
ライバルの女の子に邪魔をされたり、友達に恋の応援をされたり。
間違っても、両想いになって緊縛するようなことはない。
夏休みの終わりが近づいたころ、わたしは自分の求めるものは「SM」というものだと知り、そして自分はそういうものが好きなのだと思った。
わたしもいつか……赤い縄で縛られたい…。
そう思っていた。
けれど、現実は違っていた。
性的な知識はとても豊富だったけれど、内気だったわたしは大学生になるまで処女だった。
初めての相手は、優しくわたしを抱いてくれたけれど、ただそれだけだった。
大学の講師に誘われて、使われていない教室に呼び出された。
キスをされて、
「見られたいんでしょ。」
と意地悪に囁かれ、胸を露出された時、体がキュンと反応した。
でも、講師は複数の女の子に手を出していたことがわかり、わたしのほうから離れていった。
次につきあったのは、柊真だった。
柊真も、わたしを拘束して嬲ったり、弄ぶようなことはなかった。
優しく大切に扱ってくれた……。
いつの間にか、わたしの中でそういう衝動は鳴りを潜めた……。
「なくても…日常生活に支障のないもの。」
そういう感覚になっていたはずだった……。

