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いつ見きとてか 恋しかるらむ
第1章 『 フォンダン ショコラ 』

いつもなら、昼寝ならぬ
朝寝?二度寝?を
決め込むところだけど、
今日は、違っていた。
久しぶりのおひとり様……。
夫の転勤で、
いわゆる首都圏と言われるところに
住むことになった。
最初のころは、そこここに寺社仏閣がない
この街が好きにはなれなかった。
なにより、友達が一人もいない街で
どんなふうに楽しめというのだろうか。
でも、不思議なもので
少しずつ、街を好きになり、
一人で過ごすことを楽しむようになった。
よくよく考えてみると、
住む前は、年に一度や二度……、
わざわざ来ていたのだ。
洋菓子の勉強に、
紅茶の特別講習、
有名パティスリーを調べて
食べ歩き……と。
いつでも行けるようになったんだ。
と、思えるようになるまで、
数年かかってしまった。
そして、最近、
やっと一人で楽しむ余裕ができた。
ガイドブックを買ったり、
ネットで情報を収集したりしながら、
行きたいお店を決めたり、
行き当たりばったりで
雰囲気のよさそうなカフェで
お茶をする時間を持てるようになった。
今日は、電車に乗って都心に出ることにした。
行きたいカフェは、
旅行の時に行ったきりになっていた。
都内でもブランドショップが立ち並ぶ
オシャレなエリアにそのカフェはあった。
一階は、ガラス張りになっていて、
意識せず歩いていると
パティスリーだとは気がつかない。
銀色の重たい扉を開けると
クッキーやフィナンシェ、
マドレーヌなどの焼き菓子が
キレイにディスプレイされている。
L字型に置かれたショーケースの中には
様々なケーキが並べられている。
マカロンは、まるで宝石のようだった。

